本編沿い


□Story18
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「ちょっと…それ何プレイ?」

ドレス姿のまま手首を縛られブリッジに連れて来られる由希を見て、一足先にブリッジで待機していたムウが冗談なのか本気なのかよくわからない言葉を紡ぐ。
疑いをかけられたであろう由希を連れる兵士は顔を真っ赤にしながら否定し、ムウはその間に由希を自分の元に引き寄せしっかりと抱き締めた。

そんな様子にキラは酷く自分では持て余す負の感情を抱いて、ムウの腕の中で「セクハラです、ムウさん」と特に何も思ってなさそうな様子の由希を自分の腕の中へと収めなおした。

「わ…!」
「うお」

後ろに引っ張ったからなのか、驚いたように丸くなる由希の瞳に自分の乱暴さを詫びつつ、自分しか写していない桜色に安堵する。

酷く由希に依存している自覚はあったけれど、自分から由希の側を離れるなんてことは出来ない。今由希が居なくなってしまったら、自分はどうなってしまうのだろう。

考え事により力が強くなるキラの抱擁に、由希が戸惑うようにキラの名を呼ぶ。

「キラ…?」
「あっ…ごめん、痛かった?」

キラは少し力を緩めて、由希の表情が見れるまで体勢を変える。拘束されているのは由希なのに、まるでキラの方が自身の感情に縛られているかのように苦し気な表情だった。
解放を望むようなそれに、由希は、自身の動かない両手を憎み、心配げに瞳を揺らす。

「自分から拘束してって言ったけど、早まったね」
「……え?」
「だって、キラを抱き締め返してあげられないんだもの」

きつくきつく抱き締めたのに、由希は不安のかたまりだったキラの心を柔らかく解きほぐしていった。それが幸せで、暖かくて、キラは噛み締めるように大事に胸に仕舞うと、由希の額にキスを送った。

「そろそろいいかしら」

後ろからかけられた優しい声と、隣でされた咳払いに、我に返って慌ててキラは由希を解放する。いつの間に来たのかカガリは顔を真っ赤にしてキラと由希を凝視し、キサカはそんな少女に溜め息ともつかない何かを吐き出す。

「ではこれより、深山大尉に掛けられたスパイ容疑についての審議を行う」

場を取り直すようにピンと張ったナタルの声に、しかしカガリがそれを一瞬で無にかえす言葉を紡いだ。

「ところで、なんでさっきから由希にスパイ容疑なんてものがかけられてるんだ?」

思わず周りもずっこけかけるそれに、しかし納得するように言葉を吐き出したのはマリューだった。

「そうね…カガリさんは知らないんだものね」
「由希は、元ザフトレッドなんだよ」

続くように掛けられたムウの言葉に、カガリは驚愕の表情を浮かべ叫んだ。

「え…ッ!?ど、どんな船なんだここは!」
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