本編沿い
□Story18
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「ど、どうしたんだその格好は!」
戻って来た私たちを迎えたのは、困惑した副艦長の顔だった。
Story18、親愛の情かそれとも
「ええと、これは…」
アイシャに言われてドレスのまま帰って来たことが原因で、いつもは煩いくらいに饒舌なカガリが口を結んで不機嫌そうに顔を背けている。きっと寄せられる好奇の目もまた一因なのだろう。
そんなカガリに代わってキラが複雑な今までの経緯を話そうと口を開くが、説明するのに戸惑っているのか、ええと、ええと、と話して良いものか考えあぐねている様が伝わってくる。
由希はそんなキラの様子から、バルトフェルドからの言葉の数々がキラの精神を攻撃し、大きな衝撃と疲労を与えたのだろうと察し、詰まるキラの言葉を引き継いだ。
「砂漠の虎の陣地に、お呼ばれして来たんですよ」
しれっと言う由希に、しかしその瞬間凄い勢いで地球軍の兵士もレジスタンスの面々も表情を変え、厳しい目で銃口を向けた。
「な…っなんだよ、これッ!」
冷静なサイーブに向けて、拗ねているどころではない状況を察したカガリが噛みつく。更なる困惑から険しい表情になるナタルに、キラは先ほどまで言葉を詰まらせていたとは思えないほどはっきりと言葉を発した。
「街でブルーコスモスの襲撃に遭遇したんです!僕たちも自分の身を守るために戦ったら、偶然砂漠の虎もそこにいて、“君たちは恩人だ”って!」
偶然性と無理矢理連れていかれたのだということを強調して、キラは急かされるように言葉を紡ぐ。体は多くの銃口から庇うように、由希を守って。
「だが深山大尉は砂漠の虎を知っていたのだろう?また彼も」
「アイツはサングラスかけてて、おまけに変な恰好までしてたぞ!」
あくまで冷静なナタルに、カガリまでが参戦し、合流ポイントといえど街中であるにも関わらずジープの前は騒然となる。その事態に終止符を打ったのは、きっとこの中の誰よりも冷静であろう───由希だった。
「取り敢えずここは街中ですし、軍法会議にかけるにしてもこのメンバーで話し合っていいことではありませんよね?私を拘束して戻るのが賢い方法だと思うのですけれど」
「…そうだな、深山大尉の言う通りだ」
決まりね、とまるで他人事のように由希は微笑んで、近くに居た兵士に自身を拘束させる。近付かれた兵士が恐怖からなのか震えたのが、キラには許せなかった。
「…なんで由希が拘束されなきゃいけないんだッ!」
吐き出すように口を出たそれに、カガリは不似合いな涙を浮かべかけて、由希はそんな二人に苦笑しながらも、いつもと変わらない笑みで「ありがとう」と言った。
なぜそんなに強いのか、と、キラは心の中で痛いくらいに呼びかけるしか出来なかった。