本編沿い


□Story17
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微かな幸せにひたりながら

嬉しそうな彼の姿をやきつけて




Story17、再会と再開の宴




「あ、あの……僕らほんとに、いいですから」

先程から何回も口にしている言葉を、キラはもう一度紡いだ。

豪勢なホテルの前に並んでいるのはザフトの警備員で、由希がいることで嬉しそうな表情になるものも多い。
由希は笑顔で手を振っているが、内心ではどう思っているのか。地球軍であることをひた隠しにしたいキラにとっては、由希の感情が読めそうで読めなかった。

「だめだめ!お茶を台無しにしたってのに、こっちはそのうえ命を助けてもらったんだよ?このまま帰すわけにはいかないでしょ?
大体彼女なんか、服ぐちゃぐちゃじゃないの。せめてそれだけでも何とかしてもらわないと──ってのを置いても、久しぶりに由希に会えたんだから話したいという下心もあるのだがね?」

手を差し出す彼に、キラとカガリは未だに渋っていたが、由希は彼が言い出したら聞かない性格の持ち主だということを理解しているため、おとなしくその手を掴んだ。

そのことに対してさも当たり前との表情をする彼がまた自然体で笑ってしまう。そんな由希とバルトフェルドは、キラの目から見てもこの場に馴染んで見えた。

「由希?」
「…大丈夫よ、虎も取って食いやしないわ。ほらカガリ、そのまま帰ったらキサカさんに私が叱られるから」

ね、と言う由希に、あまり断っても不自然なのだと悟る。キラは腹をくくって敵地へと乗り込んだ。
先を行くバルトフェルドは、差し出していた手をそのまま由希と繋いでいる。
ご機嫌な虎に、兵たちは敬礼をしていたが、隣の少女に嬉しそうな声が上がるのがさっきからキラには気になって仕方がない。

「隊長!ブルーコスモスに狙われたんですって!?」

急に飛び出してきた赤毛の青年は、出てきてそうそうに口を開いた。

「そこまで知ってるなら、わざわざボクに確かめることもないでしょ」
「だからひょこひょこ街へ出るのはやめてくださいと──先日だって、まだ未知数のモビルスーツ相手に、自ら打って出るなんて……!」
「ダコスタくん、客人の前だよ」
「あ……これは失礼いたしました」

キラは先日の戦闘を思い出し胸をざわつかせたが、由希は顔色一つ変えずに、ひょうひょうと青年に挨拶した。

「ダコスタさん、お久しぶりです」
「あれ…!?由希ちゃん!?何年ぶりだい?すっかり綺麗になってわからなかったよ!」
「やだ、ダコスタさんってばお上手なんですから」

由希は冗談めいた笑顔でかわし、次いで問われるであろう問いに備えて頭を働かせている。

「それにしても、どうしてここに?」
「偶然居合わせた堕天使さんがボクを救ってくれたんだよ。もういいだろう?ダコスタくん、美人を口説くのは10年早いよ」

しかし由希がその質問に答えるよりも先に、虎がうっとおしそうにダコスタを追い払った。
くすりと由希は笑いながらも、顔を赤くして去っていくダコスタに手を振った。キラと虎が交わす言葉に耳を傾けていると、ふいに柔らかな声が聞こえた。

「おかえりなさい、アンディ……あら?そこにいるのは……由希、かしら?」

虎と女性は親密な触れ合いをしながら、キラとカガリを赤面させた。
ひとしきり交流が終わったのか、女性が由希の方へとやってくる。

「うん、久しぶりね、アイシャ」

そのままアイシャと呼んだ女性の抱擁を由希が受け入れ、アイシャも嬉しそうにする。

「あ、この子ね?アンディ」

そのままの体勢でアイシャはカガリを見ると、体勢を解いてカガリの肩に手をかける。
カガリが真っ赤になるのが面白かった。

「ああ、どうにかしてやってくれ。チリソースとヨーグルトソース、それにお茶までかぶっちゃったんだ」
「あらあら、ケバブね?──さ、いらっしゃい。由希も」
「え?私はどこも汚れてないけど?」
「あなたに着せたい服があるわ。アンディと話す間くらい、家に戻ってきたつもりでいてくれないかしら?」

仕方ないなぁと由希は苦笑し、心配そうに見つめるキラに、すぐ戻るねと伝え、アイシャに手をひかれながらも戸惑うカガリに付き添って行く。
キラはバルトフェルドに呼ばれ、一室に入った。
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