本編沿い
□Story13
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決めるのはあなた
そう、すべてあなた
でも、それだけは…選んでほしく、なかったよ
Story13、決断による結末を、知らないでなおそれでも
「堕天使ちゃん!」
「…なんですか」
うずくまるように船内の陰に身を押し込んでいた由希は、いつ追いかけてきたのか目の前にいるムウに怪訝そうな眼を向けた。
「いや…大丈夫か?と思ってね」
「なんなんですか…それ。…ってか、黙認してましたけどやっぱり堕天使ちゃんってのもやめてください」
「難しい年頃だな…由希じゃ、だめなのか?」
「…面倒くさいんでもうそれでいいです」
「ん、じゃあ由希も俺のことは名前で呼ぶように」
心なしか和んだ由希の頭に、ムウは手を置き、ぽんぽんと撫でる。
払われる確率は五分五分だと踏んでいたが、由希は嫌がるそぶりを見せなかった。
「あんま、無理すんなよ…」
ムウの言葉に、由希はヴェサリウスで言われたラウの言葉を思い出した。
『…あまり無茶をするなよ、拾ってやれないかもしれないのでな』
自分の宿命を告げた彼と、憎しみを分け合うように、同時に自立するように、今日まで生きてきた。
変な人で、読めなくて、でも、大事なひとだからザフトには戻らないと誓った。
今は、どうなっても、願いを託した彼と、絶望の淵で世界の終焉を望む彼のために、短い命を捧げたかった。
──甘えは、許されない
「…子供扱い、ですか?」
「お前なぁ…」
「…すいません」
「え?」
許されない、のに。
「今のは、かなり…可愛くなかったですから」
呆れ顔から驚きへと表情を変えていたムウは、今度は苦笑を浮かべる。
しばらく身を縮めるまま俯いていた由希には表情の細部まではわからなかったが、雰囲気で伝わっていた。
そのうち、やさしく撫でられていた髪をくしゃっと掴まれる。
「…?」
訝しげに視線を向けると、眩しいくらいの笑顔でムウは笑った。
「大丈夫、十分可愛いから」
オトナの余裕なのか、不思議といつもは癪に障る軽口が心地よかった。
少し頬を緩めた由希に、お、っとムウは胸をときめかせ、由希の隣に腰を下ろす。