本編沿い
□Story11
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バスターをムウが抑えている間に、デュエルとブリッツは真っ先にリオンへと向かっていった。
〈由希!?由希なんですか!?〉
割り込む通信で、映ったのはニコル。
優しくて、凄く暖かい子。彼のピアノが大好きで、年も一番近いから誰よりも仲良しだった。
「ごめんね、ニコル、イザーク、ディアッカ」
由希は一声掛けると、変わらぬ速さで今は敵となったモビルスーツの戦闘能力を奪いに行く。
〈由希……由希、貴様…!何故!〉
「相変わらずね、イザーク。あなただけが知っていたのに、分からない?今私がザフトに戻ったらどうなるか……」
通信を続けながらも風のように素早く動く由希に、キラは呆気に取られる。
詰まるイザークは、なおも叫ぶ。その声は、キラにも届いていて。
〈ッ、由希!!言ったはずだ!俺は……ッおまえが好きだと!!!〉
「私も言ったはずね、イザークにはもっといい人がいるって」
きっぱりとした由希の声に、ニコルが叫ぶ。
〈なら……手加減はしません!〉
我ながら辛いことを言っていると思いながら、由希はアークエンジェルへ向かうブリッツに交戦する。
デュエルは諦め切れないのかなおもリオンに向かおうとしたが、ストライクがそれを阻む。
〈くそっ……くそっ……由希……ッ〉
通信から漏れる声がどんなに悲痛でも。キラには守らなければならないものがあった。
ミラージュコロイドを展開するが、さすが2人で戦い方を研究しただけあって由希には見切られている。一向に攻撃を加えられない様子に、ブリッツは渋った。
〈由希…さすがですねっ〉
「……ニコル、お願いがあるわ」
一向に攻撃の手は緩めないのに、由希はブリッツだけに通信を絞る。
「出来る限りでいいわ、アスランの側に付いていてあげて…」
ニコルは目を見張る。しかし訳が分からないだけに、どうしていいのか分からない。
するとアークエンジェルから閃光が迸り、引き裂かれたようにブリッツは艦に取り付いてしまった。
引き離されてしまった方向が悪く、リオンはガモフまで飛ばされてしまう形となった。
容赦なく撃ってくるローラシア級に、由希が機体を翻そうと、艦隊を攻撃する。
キラがアークエンジェルを見たのは由希が素早くブリッツ抑える一瞬前。キラの中で、何かがはじけた。
〈──やめろォォォッ!〉
デュエルを引き離したストライクは真っ先にアークエンジェルへと向かう。
追うデュエルのビームライフルを軽やかにかわしながら、ブリッツに斬りかかる。
かわしきれなかったブリッツは胴を蹴り上げられ、追いついたデュエルは一瞬でストライクに叩きのめされた。
通信から入ったうめき声からするに、命に別状はなさそうだが、重傷だと予想する。
それは本当に一瞬の出来事で。
ムウは驚きに目を見開いていたが、由希は複雑な表情で、呟くしかなかった。
「バーサーカー…」と、昔上司がよく言っていた言葉を。