本編沿い
□Story10
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「駄目だよ」と、彼はそう、呟いた
Story10、求めた絆と愛憎と
不思議そうに首を傾げるラクスを見て、キラは再度呟く。
「やっぱり、駄目だ……」
その意を決したような呟きに、由希はキラと目を合わせ、微笑んで頷いた。
「黙って、僕について来てください…静かに……」
こくりと了解したラクスの後ろを守るようにつく由希に目配せをしながら、2人は展望デッキを出ようとし──トールに、遭遇してしまった。
「……何やろうとしてんだ、おまえ?」
間にいるラクスを見て行動を悟ったのだろう、硬いトールの表情に、キラは苦しげに顔を背けた。
「黙って行かせてくれ、トール……僕は嫌なんだ、こんなの!」
トールはしばらく黙ってキラを見つめると、やがてにっと笑った。
「──まっ、女の子人質にとって逃げるなんてのは、本来悪役のやることだかんな」
キラが眼を見開いて驚いていると、トールはこつんとその頭をこづく。
「手伝ってやるよ」
あっさりと言ったトールに続き、4人は周りを気にしながらもなんとかパイロットロッカーへたどり着く。
男を追い出しラクスに船外作業服を着せると、キラとラクスと由希は、ストライクのコックピットに収まった。
「またお会いしましょうね?」
「それは…どうかな」
おっとりと言ったラクスに、トールは苦笑する。不意に彼の顔が硬くなった。
「キラ……」
「ん」
「……おまえは、帰ってくるよな?」
OSを立ち上げていたキラが、はっと顔を上げる。ラクスも由希も、黙ってそんな2人をじっと見つめていた。
そのとき──
「おい!何してる!?」
聞き慣れたマードックのがなり声に、みんながせかされる。
トールは泣きそうになりながら、繰り返した。
「おまえはちゃんと帰ってくるよな!?俺たちんとこへ!」
ハッチを閉じる寸前、キラは力強く頷いた。
そんなキラを見て、由希もラクスも一瞬目を合わせ笑うと、次ぐ緊張に瞳を強くした。
「──きっとだぞ!約束だぞ!」
ハッチを解放し、ストライクが歩き出す。
「──きっとだぞ、キラ!俺はおまえを信じてる!」
なおもよびかけるトールの声は、キラに確かな勇気を与えた。