本編沿い
□Story9
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所詮、こんなものかしら
今では、あなたが近く見える。
Story9、相互理解の前奏曲
「戦闘……」
ラクスと士官室にいた由希は、第一戦闘配備の放送に呟きを漏らした。
「ラクス、私行くけど──外出ないでね」
優しく言って席を立つ由希に、ラクスは首を傾げる。
「由希も戦うのですか?」
「いや…とりあえず、整備士扱い、かな」
苦笑しながら由希は、格納庫へと向かう。
「絶対出ないでね!ハロにも、鍵は開けさせないこと!」
親友への忠告を、しっかりと残しながら。
格納庫に辿り着いた由希は、今まで遠巻きに見ているだけだったストライクの最終調整に加わった。
やって来たキラにはまだ目を向けられないだろうが、結構コレで扱いやすくなっただろう、なんて思いながら。
後に、キラはしっかりと由希の思いを受け取っている。
ゼロに飛び乗るムウは不適に笑い、発進していった。
「敵はナスカ級らしいぞ」
…少し不吉なことを言い残しながら。
遅れて入ったキラに、マードックは「遅いぞ!」と叱咤をしたけれど、キラも負けじと叫び返す。
喧噪の中ストライクの発信直前に、モニターにサイの顔が映る。
〈キラ、先遣隊にはフレイのお父さんがいるんだ!頼む!〉
フレイ、というとさっきラクスに聞いたナチュラルの女の子だろう。
ラクスは気にしている様子はなかったが、コーディネイターのことをあまり良く思ってはいないらしい。…キラ・ヤマトのことも。
由希は苦笑ともつかないものを浮かべる。
都合のよい人間と、変わらないコーディネイターとナチュラルの距離に。
「敵は…ジンと………イージス、か」
アスランは本国から戻ったのだろう、とするとヘリオポリスの件もザフト寄りで終わったに違いない。
ラウと今の評議会が、この脅威を見逃すはずはないからだ。
宙で交戦中であろう二機は、限られた人しか知らない親友同士の撃ち合い。
かくも残酷なそれに、しかしあのキラ・ヤマトがやられるわけはないだろうと思っていたのだが…
被弾したゼロの着艦で、由希は表情を変える。