本編沿い
□Story6
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馴染む、なんて茶番でしょう。
Story6、殺戮戯曲の変死
あれから12時間が経過し、由希は異常な速さで回復を見せた。
相変わらず縛られてはいないものの、出歩きの許可などないだろうから、ただベッドの背に凭れるように時を持て余していた。
動き回っちゃいけないのかなぁと部屋で思いを馳せていると、突然扉が開く。
「あっ!」
治療場であろうこの部屋に、活発そうな少女が入ってきたのは驚きだった。
しかもその少女は自分と同じくらいの年齢にも関わらず、地球軍の軍服を着込んでいたから。
「失礼しましたっ!」
「あぁっ待って待って!」
由希は追いすがる思いで少女を引き止める。
「あの、すこしお話してくれない?さっきから退屈で…あ、勿論あなたが良ければ、だけど」
そんな由希に、ミリアリアの表情が驚きから、和らいだものに変化する。
「…いいよ!」
近付いて来てくれた少女が由希の隣に腰を下ろすと、由希は嬉しそうに礼を言った。
「私ミリアリア!ミリアリア・ハウよ。ミリィって呼んでね」
「私は由希。由希・深山だよ。ミリィは、何で軍服着てるの?」
由希は疑問を直球にぶつける。ナチュラルにとってはまだ子供の年齢のように見えたから。
「えっとね、私達…っていうと、まだ私以外にもいるって分かると思うけど、ヘリオポリスの学生だったの。でもザフトの機体強奪に巻き込まれたどさくさで、ストライクっていう軍の最高機密を見ちゃって」
「あぁ…それでここに…」
由希は少々罪悪感を覚え表情を暗くした。
子供に戦争を見せつけて喜ぶ趣味もないし、あの作戦はラウの独断ともいえるものだったから。
「で、フラガ少佐から出来ることをやれって言われて、私達キラだけ戦わせるのは何か違うって思って…あ、キラってストライクのパイロットなんだけど──」
「…僕が何?」
入ってきた人影に、目を見張る。
あぁ、アスランの幼なじみの彼は、キラ君っていうんだ。
頭ではそれだけのことだと納得しようとしているのに、嫌な不安と予感がそれを邪魔をする。
ただ、コーディネイターというだけで、初見の兵器をああも扱えるものだろうか?
「キラ!今由希と話しててー」
「あ、由希さん…そうだ、僕自己紹介してませんでしたよね?」
目の前の彼は、訓練を受けているザフト兵士を、初めての戦闘で撤退させ二度目には撃墜した。
自身にも覚えのあるその能力値の高さ。パズルのピースが不気味な音を立てて止める暇もなく構成されていく。
頭に鳴り響く警鐘に耳をふさぎたくなる。
柔らかいキラの笑みが黒いもやに包まれて、何も見えない
聴覚だけが頼りなのに、今まで聞こえていた小さな物音が何もしなくなり、キラの声だけが直接頭に響いてきた。
「僕はキラ、キラ・ヤマトっていいます」