本編沿い


□Story4
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目の前には、真剣な瞳のイザーク。



Story4、恋の華を咲かせるには血みどろな養分はいらないと




「ええと、私もすきだよ?」

わざわざ首をかしげ、薄く笑いながら逃げ道を残したのに、イザークは見透かすように憮然と言い放った。

「…そういう意味じゃない」
「どういう意味よ」
「……わかっているのだろう?由希、おまえを愛してる」
「っ…イザーク…、何冗談…」
「冗談なわけがあるか!冗談で俺が誰かに好きだと言うとでも思っているのか貴様は!」

戸惑う彼女を包むように、イザークは由希を抱き締めた。

「愛している…だから知りたい。由希のことも、由希の気持ちも」
「…離して…よ」

自分と二つ程度違うイザークの体を片手で制してみる由希を、イザークは力を入れないように気をつけながら──少しだけキツく、抱きしめ直す。

「離さない」

そんなイザークに、由希の瞳が陰る。

「……聞いてなかったの?私、臓器が半分しかない。戦闘しか能力無いくせに、肝心なとこで体調崩すような不要な兵。いつ死ぬかも分からない、捨て駒…」
「そんなことは──」
「分かったようなこと…言わないでよ…!」

由希はイザークから体を離す。由希の瞳に映るのは、深遠すぎる憎悪と、何も映さない絶望。
何不自由のない暮らしをしてきただろう彼には絶対にわからないであろうことなのに、うわべだけで否定の言葉を紡ごうとした彼が許せなかった。

「…あなたは大事な仲間ではあるわ。でも、添い遂げるような思想、私は持ってない」
「由希、俺は」
「出てって」

由希はイザークの言葉に耳を貸さず、出来る限り冷たく言い放つ。
イザークは由希の無表情な、初めて触れる内面に、圧倒される。

「貴方には、もっといい人がいるよ」

イザークに言い聞かせるように淡々と言い、由希はイザークの背中を押す。
背に触れる手の感触で我に返ったのか、イザークが必死に由希の名前を繰り返し呼ぶ。

「由希…おい、由希!」
「もう二度と、好きとか言わないで──ばいばい」

そのまま背中を押し出され、ドアが閉まる。最後までイザークには、由希の表情が読めなかった。

「由希!おい由希!聞いているのか!?」

ドンドンとドアを叩くイザークに、厳重にドアロックをかける。
ドア越しに聞こえたイザークの声が、ドアから離れようとする由希を一瞬止めた。

「俺はっ……おまえがなんと言おうと、おまえが好きだ!だからそれだけは……それだけは忘れるな!」

何も言わずに由希はベッドに横たわると、体を丸めた。ギュッと、自分の体を強く抱き締めながら。
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