本編沿い
□Story3
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残されたへリオポリスの残骸から這い出すと、呆然と佇むアスランがいた。
Story3、運命の悪戯
「アスラン……」
由希はリオンから静かに回線を繋ぐと、気遣うようにアスランに声を掛けた。
〈………戻らなきゃな…ヴェサリウスに…〉
「…無理はしないでね」
辛そうなアスランの声に俯いた後、リオンはイージスを引っ張るようにヴェサリウスへと帰投した。
「由希」
「…何?」
艦内に着くなりこちらへ向かって不機嫌そうな視線を送ってくるイザークに、半分溜め息を吐きながら、由希はリオンの整備をするためにくるりと向きを変えた。
イザークは相変わらずの不機嫌顔でついてくる。
「由希、何でアイツと帰還したんだ」
「は?」
リオンのコックピット内で急速なタイピングを繰り返すと、よく意味の分からない質問がイザークから投げかけられ由希は思わず顔を上げた。
視線が合わさった瞬間イザークがばっと顔を逸らし、最近はこんな態度ばかりだと呆れながら口を開く。
「…別に…隊長に置いてかれて──ってか、何でイザークにそんなこと言われなきゃなんないのよ…」
溜め息を大袈裟に一つ吐いてから、由希は画面に視線を戻し、作業を再開する。
「っ!俺は、由希が───」
「!!」
顔を真っ赤にしたイザークが声を荒げて何かを言おうとした瞬間、由希が苦しそうに体を捩った。
「……!?由希!?」
「ッ入らないで!!」
困惑するまま反射的にコックピット内へ足を踏み入れようとしていたイザークは、ハッキリした由希の拒絶に言葉を失った。
荒い由希の呼吸にせめて手を貸そうと腕を伸ばすも、今度は「触らないで」と冷たく一蹴されてしまう。
イザークは今まで見たこともない由希の様子に途方に暮れ、体を硬直させるしかない。
「…ごめん、でも……触らないで…」
胸を押さえて深呼吸を繰り返す由希に何もできないでいる自分が情けなくて、イザークは歯を食いしばった。
だいぶ落ち着き、由希が息を整えていた頃に艦内放送が流れた。
<──由希・深山は至急ブリッジへ、由希・深山は至急ブリッジへ。繰り返します──>
由希はさっと顔を上げると、苦々しく笑った後ゆっくりシートから身を離す。
次いでするりと華奢な体でコックピットを飛び出した。
「イザーク、ごめんね。心配してくれてありがとう」
最後にそう言って小さく微笑を浮かべると、由希はさっきまで苦しんでいたとは思えないほど軽やかにリオンから飛び降りた。
後には複雑そうに顔を歪め、由希を見送るイザークがリオンの上に佇んでいるだけだった。