小説
□ぐしゃぐしゃの首輪
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――自分の部屋には最低限の物しか置かない。ごちゃごちゃしてるのは嫌いだからだ。
それでも九条が家に来るようになってから、わけもわからんガラクタが増えた気がする。
「九条、それ何や?」
「んー?毛糸!」
「いや…毛糸なんはわかるけど」
「で、志萬にマフラー作んの」
成る程マフラーか。しかし一体何をどうすれば今九条が手にしている毛糸(らしき物)がマフラーと呼べるまでに形作られるのだろう。
丁寧という言葉を根本的に否定したようなマフラーが出来上がりそうだ。
「ちゃんと作り方わかってるんか?」
「わかって、ない!」
軽く溜息をつき、九条を見る。編み方も知らないのに自信満々でマフラーを編むその姿は、無邪気と言うか単なる馬鹿なのか。
仮にマフラーが完成してそれが身につけるには恥ずかしい出来だった場合どうしようか。――ああそうだ、別に俺にくれるからと言って俺が巻かなきゃいけないわけじゃない。先日九条が持って来た大きいウサギの縫いぐるみにでも巻けばいいんだ。
しかしそれはそれで九条の良心を踏みにじった感じになりそうだしな。
「九条、なるべく、丁寧に…な?」
「任せて!超神秘なの作るから!」
「あぁ、期待しとるで(色んな意味で)」
「…志萬、あのさー」
少年は動きを止めて、ゆっくりとした口調で話し始めた。まるで子供が言い訳を探すみたいにもごもごしながら。
「俺、部活あるし。志萬と一緒に帰れないの殆どじゃん?」
「…?せやなぁ」
「俺いない時、女子はべらして帰ってたからさ、だから」
「はっ、はべらしてなんか無いで…!?アイツらが勝手について来るだけやからな?」
「うん、だから俺店長に聞いたんだ。女子が近寄らない方法」
そこまで言うと、視線を真っ直ぐ俺に向ける。
ベッドに腰掛ける俺を、ベッドにもたれている九条が見るという事はコレ必然的に上目使いになるわけで…アカン、可愛すぎる。
「あのね、"あたかも彼女がいるかのように指輪でもはめたら?"って言われて」
指輪はいいけど志萬だけがはめるの何かおかしいし、だからといって男の俺とペアリングってのもなーって思ってさ。だから首輪は?ってなったんだけどそしたら犬みたいじゃん?
だからマフラーならいいかなって。
そこまで言うと、数秒黙り込んでから顔を真っ赤にして抱き着いて来た。
「そーゆーの、嫌?」
「――いいや、めっちゃ嬉しいで?」
「ほんとーに?」
「ホンマに」
「そっか!良かった」
九条がヤキモチ妬いてるなんて思いもしなかった俺からすれば、このマフラーは今一番欲しいプレゼントかもしれない。嫉妬と愛の詰まった可愛らしいマフラーなんて、最高じゃないか。
「丁寧じゃなくてえーから、早く作ってや」
出来上がったら、どんなに下手くそでも、ウサギの縫いぐるみなんかに譲ってやらん。
2009.10.18 Airu
初のゾンゼロ小説^^
世間じゃ志萬×九条てなかなか見かけないんだー。
基本リバ派だからどっちも萌えるけど(^p^)
…つかこの作品受け攻めわかりづらくない?
なんて意見知らないんだからっ←