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□第二章
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あの出会いから3週間。
ケンイチからの連絡は相変わらず来なかった。
しかし、よく考えてみればケンイチは芸能人なのだ。
自分のような一般人と会うのは不味いことなのかもしれない。
それなのにお礼をしたいだなんて……やっぱり迷惑だったのかな、と部活が終わって家に帰ってからはそのことばかり考えていた。
そうしていた時、
トゥルルルル、トゥルルルル――
電話がなった。
みちるは急いで受話器を取る。
「もしもし」
「…………」
電話に出たが、相手は無言のままだ。
「もしもし?」
イタズラ電話だろうか? と少し不安になりながらみちるはもう一度声を出す。
「あっ……みちるさん……ですか?」
ようやく相手の声が聞こえた。その声は聞き覚えがあるものだった。
「もしかして、須藤さんですか?」
恐る恐る尋ねれば、ケンイチはすぐに謝ってきた。
「はい、須藤です。すみません、連絡が遅くなってしまって……」
「全然! 平気です!!」
しかし何よりもみちるにとってはケンイチが電話をしてくれたことが嬉しかったので、みちるは笑顔になって返す。
「良かった。あ、例の件ですが明日の土曜日は大丈夫ですか?」
ほっと息を吐いたケンイチは早速本題を切り出す。ちゃんとみちるが希望した曜日に合わせてくれていた。
忙しいだろうに、と申し訳なく思いながらもみちるは頷いた。
「はい、大丈夫です」
「では、明日の午後1時にあの映画館の前で待ち合わせ、でどうですか?」
「分かりました。すみません、色々無理なことを言ってしまって」
「構いませんよ。では、明日会いましょう」
「はい」
そうして約束を取り付け終えた後、電話はすぐに切れた。
それから暫く考え事をしていたみちるだったが、
「よし!」
と気合いを入れ直すとパソコンを起動させた。
(須藤さんに無理言って約束したんだから、それなりのお礼をしなくちゃ……!)
それからのみちるの作業は夜中まで続いた。