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□第五章
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ケンイチからくるメールや電話は明らかに減ってきていた。
自分からメールしても返信はたまにあったりで、電話してもほとんどが不在着信になってしまっていた。
今までこんなことがなかったために、みちるは段々と不安になっていく。
思わず、ケンイチのマネージャーである叶に電話をかけていた。
「もしもし?」
「おお、どうしたみちるちゃん。俺なんかに電話してきて」
叶は思わぬことに驚いている。
みちるは事情を話した。
「実は、最近ケンイチからの連絡が減ってきていて、だからって全くないってわけじゃないんですけど……何かあったのかなと思いまして」
叶は少し悩んだのか間が開き、そして言った。
「何かあったちゃ、あったんだが……今、ケンイチにすごく大きな仕事がきているんだよ。
映画なんだけど、その監督が今までケンイチがずっと憧れ続けていた映画監督でさ。
この話がきた時、一緒に仕事が出来るってあいつすごい喜んでいたんだ。
今まで以上に、多分本気で今の仕事に取り組んでいると思うんだ。
だから、今はそっちの方に気がいってしまっている。その事、分かってやってくれないかな」
「………………」
叶の話を黙って聞いていたみちる。