cross
□第四章†護るということ
2ページ/32ページ
「あっ!藍果様、おはようございます!」
朝食を食べ終え、藍果が廊下をひとりで歩いていると、騎士団の団服を着た青年にあいさつをされた。
「おはようございます」
笑顔でそう返すと、青年は少し顔を赤くさせ、一礼してから通りすぎていった。
あたしがこの世界・オーリウスに来てから、一週間が経ちました。
お城の人達にあたしが聖女だと公表した時は、城中が大騒ぎになって、本当に大変でした。
でも、一週間後の世界に公表する日迄は、そのことは最高機密ということで、絶対に他には口外しちゃいけないんだそうです。
それでも、お城の人も、守護者の皆さんもとても優しくて、毎日を楽しく過ごしています。
「わぁ…、きれい」
今、藍果は城の敷地内にある薔薇園にいた。
軽い散歩にと、美しく咲き誇る、色とりどりの薔薇の花を見に来たのだ。
「んー、良い匂い」
ピンク色に輝く花びらに鼻を近付け、薔薇の持つ、特有の香りに酔いしれていた。
朝露を浴びて、微かに残る雫に太陽の光が反射するそれは、まるで花びら一枚一枚が輝いているかの様に思える程、気高い美しさを放っていた。
「薔薇に囲まれている君もとても綺麗だね」
「!!」
自分しかいないと思っていた藍果は、突然聞こえてきた中性的な声に大袈裟に驚いた。
「クスクス…。そんなに驚かないでよ」
「あ…!」
そこにいたのは
「カノンさん!」
以前、街で迷子になった藍果を助けてくれた青年・カノン=クロノスだった。
◆