OTHERS

□Vampire Bride
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紅い月が浮かぶ夜。

月が見下ろす小さな寂れた村。
この戦国時代の日本には珍しく、村には小さな教会があった。

その教会の屋根裏には薄暗い牢の様な部屋。

中にはぼろぼろの黒い布をまとった少女が居た。
血の様な鮮やかな紅い髪、青白い肌。
虚ろな瞳は右目が灰色で左目は蒼色だった。


* * * * *


「左右の眼の色が違うぞ‥」
「悪魔の子よ!」
「気持悪い髪の色だ。」


村に産まれた少女に浴びせられた言葉。
両親さえ少女を恐れ、自分達から遠ざけた。

少女は愛を受けることなく育ち、18歳を迎えた。
村の者は大人への境目の齢となった少女に恐れおののき、教会の屋根裏の牢へ閉じ込めた。


「吸血鬼の犠[いけにえ]にしよう」
「次に村を襲った時に差し出せば良い」


村の者は口々に囁いた。

牢に入れられた少女は抵抗もせず冷たい床に座り込んだ。


* * * * *


閉じ込められてから、何日、いや何週間経ったのだろうか。

赤い月を虚ろに眺める少女。
流す涙はいつまで経っても枯れる事なく、瞳からこぼれ落ちる。

毎日、ギリギリと死神に抱かれているような感覚、耳鳴りはその高笑いのように響いて、少女の脳に浸透する。


『吸血鬼‥』


少女の口からぽつりと漏れる単語。
村の人は確か、吸血鬼の犠にすると口走っていた。

少女は昔、噂で聞いたことがあった。

牙を首につきたて、その人間が枯れるまで血をむさぼり。
銀の杭・弾、キリシタンの十字架に弱い‥


月が紅くきらめく。
こういう夜には、吸血鬼が動くんじゃないのか?

怖い‥。

少女はぐるぐると頭の中で回る情報を振り払い。
いつも変わらず自分を包んでくれる、闇に紛れるようにと瞳を閉じた。


その直後だった。

風が舞い、何か存在が目の前に降り立つ。
ごつごつと重い足音。
鎖が擦れるようなじゃらじゃらという音もした。

重い瞼を開き、顔を上げる。


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