OTHERS
□比翼連理
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義経に注いでもらった酒を飲み干す。
通る酒が喉を火傷させるように刺激し、お嬢は顔を歪ませた。
『んっ‥このお酒強いです‥』
「お嬢は酒に弱かったか。」
『えぇあまり飲みなれないもので‥』
恥ずかしそうに言い、手に持った盃を置いた。
他愛のない会話をしながらお嬢は義経の盃に酒を注ぐ。
回りは更に無礼講の様相で、中には服を脱ぎ踊り出す者や、酒瓶を持ったまま歌い出す者もいた。
二人も笑いながらその様子を見ては会話に華を咲かせていた。
「‥でな、その時に蘭丸が‥」
『‥はい‥』
「‥お嬢、大丈夫か?」
しかし途中からお嬢の相づちがぼんやりしたものになる。
義経がお嬢を覗き込むと、松明の明かりも手伝ってか‥顔を真っ紅に染めていた。
「真っ紅だぞ、酔うたのだな。」
『あはは‥、申し訳、ありませ‥っ!』
「‥!」
不甲斐ない自分に苦笑、義経に詫びを入れ水を取りに行こうと片膝を立てたが、視界がぐらりと揺らいでお嬢はそのまま義経に寄りかかってしまう。
義経はお嬢を抱き止めると、息苦しそうな表情を見て焦りを露にする。
『お嬢‥!大丈夫か?!』
「ごめんなさい‥義経さ、ま‥」
ぼんやりとした視線のお嬢を義経は軽々と横抱きにして持ち上げると、騒がしい中庭を抜けて城の廊下へと上がる。
廊下で忙しく酒の片付けをする女官を見つけると静かに声をかけた。
「そなた。」
「はい‥まぁ!お嬢様!」
「酒が回っているだけだ、心配には及ばぬ。
済まぬが俺の部屋に冷たい飲み水と濡らした手拭いを持ってきてくれ。」
「はい、すぐに!」
義経はそのまま自室へ向かうと、すでに敷かれていた布団へ優しくお嬢を下ろした。
『んっ‥義経さま‥』
「今水を頼んだ、少し休め。」
義経はお嬢の頬を一撫でして落ち着かせるように囁いた。
お嬢はうっとりと瞳を閉じて義経の指の冷たさを感じていた。
『ありがとうございます、義経様‥お強いばかりでなく優しさも持っていらっしゃるなんて‥女性が放っておきませんでしょう?』
冗談混じりに言うお嬢に義経は苦笑する。
なんだかその笑みは、少し苦しげだった。
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