OTHERS
□The god of thunder stole
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お嬢は、陸遜の女官であり、愛する婚約者でもある。
普段は少し抜けている所がありながらも、割と冷静なお嬢が、こんなに慌てているのは珍しいことだった。
それに普段は、執務の邪魔になるから、と女官の仕事以外で執務中に陸遜のもとに来ることはない。
そんなお嬢だが、今は余程焦って走ってきたのだろう、肩で息をしながら陸遜の衣にぎゅうっとしがみつく。
『伯言さまぁ‥ふぇ‥』
「お嬢‥?」
尋常じゃない様子のお嬢。陸遜はそっと自分の腹部に回された彼女の手を外し、正面から向き合うと、顎を指先で持ち上げる。
「どうしたのです?」
顔を覗き込むように問掛けると、お嬢は潤んだ瞳を陸遜に向ける。
陸遜はその眼差しに一瞬ドキリとする。
お嬢が口を開きかけたその時。
―ごろごろ‥
『‥っ!!』
「わっ‥」
遠くで雷鳴が響くと、お嬢は息を飲んで陸遜の胸に飛び込みひしっとしがみつく。
陸遜は不可解な彼女の様子をやっと理解した。
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