OTHERS

□悪戯かきなこ餅か
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『慶次さまぁー』


戦乱の世のつかの間の平和。
織田軍常駐の城は秋の日差しに包まれて閑に過ぎ行く時を刻んでいる。


『慶次さまぁ!どこー!』


閑な城に人を探す幼い声がぱたぱたと走る音と一緒に城内に響く。

小走りで慶次を探すのはお嬢。羽柴秀吉の養子の若い娘で、慶次の恋人である。

きょろきょろして、よそ見をしながら廊下を走っていると‥


―どんっ

『ぁぷっ!!』

「おっ‥と。」


曲がり角で大きな壁にぶつかったような衝撃。
そして倒れそうになった背中に大きな手が回される。


「大丈夫かい?」

『あ、慶次様!!』


嬉しそうな声をあげて、慶次の大きな体にぎゅぅっと抱きつく。


「どうしたんだ、お嬢。」


慶次の胸までしか身長のないお嬢の頭を優しく撫でてやると、お嬢は子猫の様に気持良さそうに目を細める。


『慶次様に会いたかったのです!』

「嬉しいこと言ってくれるねぇ。」

『きゃぁ〜♪』


慶次は軽々とお嬢の腰を抱き持ち上げると、くるりと回ってお嬢を喜ばせる。

お嬢はきゃっきゃとはしゃぎながら慶次にしがみついている。


『あっ!そうだ、慶次様?』

「ん?」

『えっと‥とりっく おあ とりーと!』

「??」


お嬢は楽しそうに笑顔を浮かべながら、聞き慣れない言葉を発する。
案の定、慶次はなんのことやら全くわからなかった。


『南蛮では、この時期に子ども達がこの言葉を言うんだそうですよ!』


光秀様に聞いたのです!とにこにこしながらも得意気に話すお嬢。


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