OTHERS

□Drenched With Rain
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神の怒り。

まさにそのような言葉が似合うような豪雨。


昼過ぎから驚異的に強くなった雨に、土佐の長曽我部元親の城でも土嚢を積んだり、雨漏りを直したりと兵士はもちろん、武将達までもが忙しく立ち働いていた。

元親自身さえ雨に晒されながら皆に指示を送り災害を防ぐため必死になった。


夕刻にはあらかたの作業を終えて男達はびしょ濡れになって戻って来た。

外の雨はまだ降っていたが、昼間の勢いよりかは弱まっていた。


城外と同様、城内の台所や湯殿も女官達が忙しく働いている。


『ご苦労様です。皆。』

「「御方様!!」」


作業を終えた兵士や武将と、料理や手拭いを忙しく運ぶ女官で溢れる広間に城主・長曽我部元親の妻、お嬢がやってきて皆に労りの声をかける。


「御方様、増水への備えなどは万全に。心配はございません。」

『ありがとうございます福留。これで安心ですね。』


まだ若い城主にふさわしく、年若い妻であるお嬢は美しいというよりは、可愛らしいという形容が似合う笑顔を浮かべる。


『皆も本当にご苦労様です。今夜は十分に疲れを癒して下さいね。』


お嬢は高い身分にも関わらず、皆に分け隔てなくその笑顔を振り撒き、暇があれば女官達の仕事である料理の手伝いをしたり洗濯を手伝ったりする出来た女であった。

元親の部下を愛する心とお嬢の慈愛に満ちた飾らない性格に兵士や武将、女官など城中の者が二人に心から付き従っていた。


「御方様、お部屋で元親様がお待ちです。」


部屋で雨に濡れた兵士達へ手拭いを渡していたお嬢の後ろに、一人の兵士がひざまずいて伝える。


『わかりました。ありがとう。』


お嬢は手拭いを3枚程持ち、元親と彼女の自室へと向かった。



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