ジョジョ
□漆黒コッコローネ
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温かい季節は近づけど、まだまだ夜風が冷たい頃。
ぼんやりとしたオレンジ色のような、暖かなレモン色のような光がアパルトの一室から漏れている。
部屋の中には、黒い影。
お気に入りのグラッパの瓶と愛用のグラスを横に置き、ソファに座る影はぼんやり光を放つパソコンと向き合って軽快にキーボードを叩いていた。
‥ふと、その指が止まり、闇の中に薔薇のように紅い眼球が浮かんだ。
「‥‥‥お嬢。」
『‥っ‥!』
「‥‥‥ばればれだぞ。」
『‥はぁ‥今日も見つかっちゃった。』
部屋の中の影‥このアパルトをアジトとするパッショーネの暗殺チームリーダーのリゾットが、その紅の瞳を部屋の入口に隠れて居た女‥お嬢に向けて、呆れ顔で呟いた。
『今日こそリゾットにバレないようにしてたのに。』
「お前の気配はわかりやすい。」
お嬢はひょこりと顔を覗かせるとジャッポネーゼ特有の着物の袖を靡かせてリゾットの横へ腰かけた。
漆黒の瞳をリゾットに向け、言葉とは裏腹にニコニコと笑う。
リゾットは飲みかけのグラッパを煽ると、再び瓶からグラスに追加で注いだ。
『リゾット‥?』
「あと少しだ‥待ってろ」
『少しってどれくらい少し?』
「ほんの少し」
意味のあまりない会話は、いつものこと。
お嬢の言葉をいとも簡単にスルリとかわすリゾットの瞳はまだパソコンの画面と仲良くしていた。
お嬢はむっと軽く口をへの字にすると、上品な桜の香りを残してキッチンへと消える。
「‥‥‥。」
これも、いつものこと。
リゾットはチラッとお嬢の背中に視線を投げるが、彼女はそのままキッチンでなにやらがさごそ探している。
それも、いつものこと。
リゾットは「ほんの少し」残っている書類を終わらす為に再び視線を画面に戻した。
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