メロドラマ D
□斜陽 作成中
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庭の椿が、今年も美しい花を咲かせた
おかあさまは、椿が特にお好きなので毎年庭で一番に咲いたお花をお膝元にお届けするのが、僕の大切なお役目になっている
先の戦争で疎開中にお体をお壊しになられてから、おかあさまは静養の為、屋敷の離れにお移りになり、お外には滅多にお出になられない。
だから、季節の移り変わりと共に美しく咲く花を、殊のほかお喜びになられるのだ
おかあさまの笑顔が 僕は好きだ
それこそ花がほころぶように、綺麗なお優しい微笑みを浮かべられる
その柔かな膝に頬を寄せ 優しく髪をすかれるとき、僕の心は、幸せで一杯に満たされる
いつまでもそのままでいたいのだけれど
おかあさまは 少しでもご無理をなされると 夕には必ず熱をだされるので、頃あいを見かねた乳母にいつも 部屋を出されてしまうのが、甘えたいさかりの僕には不満だった。