メロドラマ D

□夢の檻 後編
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恋した少女は

廓の
太夫となった今も
あの頃と変わらない
まっすぐな瞳で
俺を見つめ返した

それは
太夫と呼ばれ、
きらびやかな遊芸の巷で鍛えられ、花街の水で磨きあげられたしたたかな美しさ、というよりは

喩えば澄んだ湖水が、移ろう空の色、四季折々の山紫水明のその色彩を刻々と映し取って尚も、その千尋の水底は変らない静かな碧を湛えている様に
絃歌さんざめく色里の虚実織交ぜな世界に在ってなお芯は決して他に染まらない、
つよく透明な
そのまなざしだけは、

変わらないまま
まっすぐに

そして
俺は

さらさらと

幼いあのこが
銀色の振り分け髪を傾けて、
紅い花を手折って欲しいと 無邪気に俺を見上げる時の

どこまでも晴やかに澄みきった
銀灰色の瞳に

己だけを映し出したいと

ずっと焦がれていた


互いに手を
伸ばせぬまま

俺達は
遠ざかるばかりで

あのこは

幼馴染みの男に身請けされるという――――

いつも側で見守っていたアイツが、ラビが
筒井筒の幼い約束を果たすなら、



愛しい
あのこが

幸せに
なるのなら



俺は、、、―――
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