メロドラマ D
□夢の檻 前編
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花街の一角、江戸屋の二階座敷より見渡せば、廓一と言われる江戸屋自慢の吉野桜の大木が闇にうかびあがる
遠く離れた座敷から、聞こえてくるのは三味線の音色。
二階の奥座敷は、泊客専用で、かすかに酔客のさんざめきが流れてくるが、それも耳触りと言うほどではない。
「井戸端に桜危なし酒の酔いってとこさね。
「桜にみとれて、先程からもうずっと、、、いっそ、此所よりも眺めの良いお座敷にでも移ったらどうですか?」
欄干にもたれかかってボンヤリ呟くラビをアレンがからかう。
「いいんさ。今は桜よりアレンに酔いしれたいから」
うそぶくラビに、アレンは
どうだか、、と徒めいた流し目で、艶やかに嫉じて見せる
スッと、裾前を鮮かにに捌いてその傍らに寄り添えば、頭の櫛簪はシャランと華やかな音を立てる
桜梢の先に懸かる月を見上げるは
同色の銀の瞳
「――ああ朧月に雲がたなびいて、いい風情ですね」
春の宵は濃厚で、豊潤な酒の味わいにも似た心地好い酩酊感に、いつまでも浸っていたくなる
ホロホロとした月明かりの下、ラビの胸に頬を擦り寄せアレンは甘く囁く
今宵はこのまま、月明かりのなかで、 僕を
抱いてください
朧月に
酔わされて、
現つの 夢へと
墜ちて行く、、――