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□【ギルフォード家の日常】ギルフォード×ロイド
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「ロ・・・ロイド・・・?何をしてるんですか?」
家に入った途端、辺りに漂う異臭に顔をしかめる。
甘いとも、苦いとも言いがたい匂い。
「あれぇ?ギルバート、随分早かったんですね〜。ふふ、じゃあ奥さんらしく、お帰りのキス〜♪」
ちゅ!と飛びつきながらキスをする。
タートルネックにチノパンという、いつものラフな格好だったが、その上に着ている白いエプロンが可愛らしくて、妙な匂いなどどうでも良くなってしまう。
ギルフォードは細い身体をぎゅうと抱きしめて、唇にキスをした。
「ただいま帰りました。今日はあまり軍務が立て込んでおりませんでしたので・・・」
嘘だった。
本当は残業しなければいけないほどの仕事がある。
正に山積みというやつだ。
しかし、【新婚】である自分が、どうして残業などできよう。
昼休みも取らず、午後の休憩時間も返上して、猛烈な勢いで仕事をこなしてきた。
あまりの勢いに、つけペンを3本潰してしまったほどだ。
しかし、昨日は5本潰したので、今日はまぁいい方だろう。
「お・・・奥・・・奥さん・・・」
「はぁ〜い」
呼ぶとニコリと答える。
それがこんなに幸せなことだとは。
喜びに顔が綻ぶのを止められない。
この喜びを味わう為なら、ペンの過剰消費くらい何だと言うのだろう。
「ギルバート?今日はねぇ、僕ちょっと凄いものに挑戦してみたんです〜」
にこにこ笑いながら、上目遣いにギルフォードを窺う。
可愛い。
犯罪的な角度だ。
「凄いもの・・・ですか?」
何となく嫌な予感がする。
予感というか、むしろ確信だが。
「ふふ、何だと思います〜?」
「は・・・いや・・・何でしょうか」
「じゃじゃじゃ〜ん!な〜んと!今日はプリンに挑戦してみましたぁ〜〜!」
その言葉に、やはりと思う。
この得体の知れない匂いの正体は・・・。
「そ・・・そうですか。それは凄いですね」
はは・・・と乾いた笑いを零す。
怖い。
この匂いがプリンだとは、到底思えない。
どんな物がプリンの代わりに出来ているのだろう。
「ねぇ、こっち来てください〜」
袖を引かれて台所へと向かう。
そうだろうとは思っていたが、キッチンは酷い有様だった。
ボウルや計量カップ、お玉に何故かマッシャーまで。
あらゆるキッチンツールが散乱している。
そして、当然というか何というか、その場からは先ほどの異臭が強く漂っていた。
「ほら、これぇ〜」
そう言って冷蔵庫からカップを出す。
見た目はプリンのカップだ。
透明で、花形をしている。
どこかのメーカーのプリンの空き容器を再利用しているらしい。
しかし。
どこからどう見ても、その容器の中身はプリンの色をしていない。
プリンというのは本来、卵黄と牛乳が混ざった色をしているのではないだろうか。
「こ・・・これは・・・チョコレートプディングというものでしょうか。それともゴマプディング?」
「チョコ・・・?ううん、チョコなんて入れてないですよ。勿論ゴマでもありません〜。ふつ〜のプリンの材料ですけどぉ?」
そう返されて絶句する。
この茶色というか、黒というか、様々な色が混沌としているこの物体が、本当にプリンの材料から作られたものだというのだろうか。
「そ・・・そうですか」
それ以外言えなかった。
可愛らしい奥さんに、これ以上何を言えるというのだろう。
「ふふ、味見してください〜」
途端、身体が硬直する。
やはり。
やはりそう来るのか。
奥さんはエプロンをヒラヒラさせながら近づいて来る。
その手にはプリン・・・では絶対ないと思うが、奥さんがそうだと言ってるのならそうなのだろう物体が。
ギルフォードは頭を巡らせる。