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□【幸せの法則】ギルフォード×ロイド
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「どうも〜、こんばんはぁ」
緋色のタキシードを美しく着こなした紳士に、そう声をかける。
その呼びかけに、美しい漆黒の髪の主が振り向く。
「アスプルンド卿?これは珍しいですね。このような場でお会いするとは」
相手はいささか驚いた様子だった。
もっとも、ロイドは伯爵家の人間でありながら、貴族社会にまったく興味を持たず、ろくに社交界に顔も出さないので、その反応はごく当然と言える。
「あはぁ、ギルフォード卿こそ、今日は兄上たちはいらっしゃらないんですかぁ?」
いつもこのような場に来るのは、ギルフォードの兄たちなのだが、今日は一人のようだった。
「ええ、本日は名代で。まぁ稀なことですが」
そう言ってニコリと笑うと、周囲に居た適齢期の少女たちが一斉に声を上げた。
ギルフォードは長身で、鍛えられた体は均整が取れていたし、何よりその面差しは非常に整っていて、社交界ではとても人気がある。
しかし、コーネリアの騎士という立場もあって、彼に直接声をかけてくる人間は少なかった。
そのギルフォードに気安く声をかけた人間がいるということで、ロイドも先ほどから注視されている。
貴族としてはいまいち知名度に欠けるロイドだったが、やはり長身で、銀色の髪に縁取られた顔は美しいと表現しても差し支えなかった為、益々他の人間の興味を煽ったようだった。
「あの方はどなた?」
などと言う声があちこちから聞こえる。
「あちらへ参りましょうか」
居心地悪そうに視線を彷徨わせるロイドに気付いたのか、ギルフォードはロイドの腕を取って人気のない方向へと歩き出した。
程なくホールの端に辿り着き、更に扉を開けて廊下に出る。
途端、先ほどの喧騒が嘘のように、辺りには静寂が甦った。
耳を澄ますと、扉の向こうからはごく小さく、ダンスの楽曲が聞こえる。
「大丈夫ですか?」
ギルフォードがそっと表情を窺うと、ロイドはホッとしたようにため息をついた。
「僕、ああいう場所って苦手なんですよねぇ」
廊下の片側に大きく切り取られた窓の淵に立ち、さも嫌そうに眉をしかめた。
「それは私も苦手ですよ。このような場所より、戦場の方がよほど落ち着きます」
平和を尊ぶブリタニアの騎士として、このような言い草は良くないのですが、と続けて、ギルフォードは笑った。
「それよりアスプルンド卿、今度御結婚なさると聞き及びました。おめでとうございます」
そう言って丁寧に腰を折る。
「いいぇ〜、まだ婚約以前って感じですけど。僕みたいな変人と結婚なんて、相手のお嬢さんが可哀想ですよ〜」
ガニメデ目当てで結婚を決めたんです〜とは口に出さず、ロイドはただ薄らと笑った。