krkshort


□その目に
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彼の試合を見ていた。

その彼というのは、帝光中バスケ部主将の赤司征十郎。


あの個性が強すぎる4人、いや5人か。
それを統率し、的確な指示を与え、試合を進める。

まるで、次の展開が分かっているかのよう・・・基、分かっているのだ、彼には。

彼の目には先が視えている。


そんな彼は、涼しげに…例えるなら1人で将棋をさす時のような、
如何せんバスケに似つかわしくない表情で、コートに立っている。



試合の結果は、もちろん勝利。


I who win all am altogether right.


なんて名言が生まれる程、彼にとって勝利は絶対。
・・・迷言の間違いじゃないかと私は密かに思っている。





『お疲れ様』

「疲れてないよ」

『でしょうね、汗かいてないし』

「ああ」





当然だと言い放つ彼に、驚きや呆れをすっ飛ばして、少し尊敬の念を覚えた。

今までの彼を何度反芻しても同い年、というか中学生に見えない。
私が子供っぽすぎるのかと思えるくらいに、彼は達観した人間だ。





「まあでも、名前がくれるならタオルも貰っておこうかな」

『・・・悪趣味だね』

「まさか、これ以上ないくらい高尚だよ」

『はいはい、貴方が言うならそうですね、赤司様』




若干投げやりに言った。バ・・赤司様に。

そうしたら、頬に細い圧力が。あ、指か。
早い話、彼が私の頬を突いているのだ。

・・・たっぷりの皮肉を込めたのに、伝わらなかったか。





『・・・何』

「名前を見ると、つい構いたくなるんだ」

『子供か』

「違うよ、君が僕の恋人だからさ」





ああ、そういえばそうだったね。

と、感情のかの字もないような言い方をしてみせた。
それでも彼は(苛々するくらい)満足そうに微笑んでいた。

何なのこの人、マゾなの?




「僕の言う事は絶対だからね」

『…そうでなきゃ赤司の告白なんか断ってるよ』




なんだ消去法?と、(先程よりは純粋に)目を細めて笑う彼。

不覚にもかっこいいと思ってしまった。私のバカ。
・・・なんとなく素直になるのは癪なので、言葉にはしてやらない。




「名前、僕の事好きかい?」

『・・・・・・・・さあね』




私のこの答えに、彼はまた笑った。






(その目に映るのは、)
(私だけであってほしい。)




そう思うくらいには好きだよ。

・・・もう、知ってるでしょ?





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