■ふたりじめ■
□お酒は涙の味
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『はい,もしもし』
「あ,花子ちん〜?」
敦君から電話があったのは大学も終わり,お夕飯の買い出しをスーパーでしている時だった。
ちょうどカゴに特売のお肉を入れ,今日はカレーでも作ろうかしら?と香辛料や調味料が置いてある場所まで移動しようとしていた矢先,鞄の中から鳴り響いた携帯電話の着信音。
この音は敦君だ…!と思って,電話に出たら敦君の背後が何やらにぎやかだ。
「花子ちんはもうお夕飯作っちゃった〜?」
『ううん,まだだよ!ちょうどお夕飯の材料買ってたとこなの』
カゴを持ち直して,調味料の置いてある棚を捜索する。
目当てはガラムマサラ。
私が作るカレーには,いつもこれを少し入れるようにしているのだ。
「あ,じゃあさ」
『んっ?』
「まだ作ってないなら,今日は外でご飯食べない?」
『外?』
「そうそう!今日は赤ちんもいないしー」
そう言われて少しだけ考える。
…まぁ,カレーは明日作ってもいいし,確かに今日は征十郎君はいない。
この前行われた将棋の順位戦で好成績を収めた彼は,次の戦いへと歩を進める事となったのだ。
『いいよ!どうすればいいの?』
「んんー…じゃーね,1時間後に駅の噴水前でいい?」
『分かった!じゃあ後でね!』
電話が切れたので,ひとまずカゴに放り込んであるもの達の会計を済ませるためにレジへと向かった。
敦君が外食に誘うなんて珍しいな〜と思いつつ,久しぶりの外食に心が躍る。
鞄からお財布を出して,中に入っているスーパーのポイントカードを出すと,私はレジ前の列の最後尾へと並んだ。