■近くて遠くて■
□思い出す…
1ページ/2ページ
世間一般では良くある話。
12年前,私の兄と,健司の母が結婚したのだ。
そして兄のインドへの転勤が決まったのが2年前…。
日本から離れたくないと言った健司を,兄夫婦は私の所へと預けて,日本を旅立って行った…。
『…あの頃は…ちっちゃくて可愛かったなぁ…』
出会ったばかりの健司は目がくりっとしていて(今もだけど)
色素の薄い髪と肌をしていて(これも今もだけど)
わがままで(これも…以下略!)……
『………あれっ!?』
良く考えたら…健司が成長したのって図体だけじゃない!?
「…悪かったな!」
『……へっ!?』
不機嫌そうな声が答える…。
視線を上げれば,目の前には口を“へ”の字に曲げた王子が立っていた…。
「……全部口に出てたっつーの!」
『……あら…まぁ…』
…うっかりしてたわ…。
お風呂に入ってる最中とはいえ,心の呟きを口にしていたなんて…。
……えっ…?
…私…今…お風呂に…
『…!!…〜っきゃあぁぁ〜〜!!』
「うおっ!!」
悲鳴と共に,手に持っていた小さな洗面器を健司へと思いっ切り投げ付ける…
が,それはあっさりと片手で止められてしまった…。