■幼馴染だってば!■

□変化した“気持ち”
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「…繋心ちゃん、すごく素敵な腹筋よね〜」
『…ぶっ…!!ゲホ…ゲホッ!!!』

ボソッと呟いた母親の言葉に、思わず飲んでいた水を吹き出し、思いっきり咳き込む。
睨んだ目を横へ寄越せば、してやったり!という顔をした母と目が合った。

「花子は腹筋フェチだもんね〜」
『…た…確かにそうだけども!』

まさかの不意打ち攻撃に思わずたじろいでしまう。
長年私の母親をやっているだけあって、ツボを本当に心得ていらっしゃる敵様である。

「それに」
『…それに…?』

にんまりとした笑顔を向けた母は、これこそ最大の切り札だ!と言わんばかりに胸を張ってこう続けた。

「花子は読書が趣味じゃない?それこそ全てを投げ出してでも本を読む時間が大切でしょ?」
『…否定はしません…』

そう。
本屋の娘だからなのか、それとも本質がそういう人間だからなのか…。
私は異常な程の本好き人間である。
それこそ、ハマってしまったらずーーーーーっと、その本が終わるまで俗世には帰って来ない。

ご飯を食べない、生理現象であるお手洗いですら限界まで我慢など当たり前で、読書に没頭し過ぎて人との約束をすっぽかしてしまう事もあり(ちなみにわざとではない。時間になっていても気づかないのである。)、それが原因で彼氏との別れ話へ発展…なんて事もやらかした事がある…。

それ程に本を、読書を愛している。

「繋心ちゃんならそんな花子の事を良ーーーく理解してるし、尊重してくれると思うんだけどなぁ〜?」

…母の言っている事は間違っていないだろう。
以前、繋心との約束をこの異常な程の趣味愛によってふいにしてしまった事があるが、彼は待ち合わせ場所に私が数刻現れなかった事により事態を察知したらしく、真っ直ぐに我が家へと訪れた。
部屋の隅で瞬きも忘れるくらい真剣に本を読んでいる私の姿を確認した彼は、側に腰を下ろして雑誌を広げ時を過ごしていたらしい。
本を読み終えた私が大層びっくりし、『何でいるの?』という失礼な疑問を投げ掛けたにも関わらず、繋心は「お前が来ねえからだろ、バーカ」と言って、苦笑しながら丸めた雑誌で軽く私の頭をポカリと叩いただけだった。
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