03/20の日記

13:42
第95話 「いざ決戦の地へ!皇の鍵の飛行船 発進!!」(アニメ:遊戯王ZEXALII)
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遊馬「真月!!真月――――――っ!!」


 伸ばしたその手は虚空を掴んだ。遊馬の目の前で、真月零は消えたのだ。






カイト「――――。」


小鳥「――――!? カイト!!」


 気づけばどこからか、遊馬の後ろにはカイトが立っていた。ベクターが起こした騒動をオービタル7が感知、すぐさま現場に駆け付けた、という所だろうか。


遊馬「真月!!!」

カイト「遊馬」

遊馬「―――!?」

カイト「どうした?何があった?」

遊馬「真月が……、ベクターに連れて行かれちまった!!!バリアンに連れて行かれちまったんだ!!!!」

凌牙「……。」


 能天気な癖に熱血漢で、いつでも真っ直ぐ前向き。そんな遊馬がアストラル以外にここまで取り乱しているのを見て、カイトが内心驚いていた。


遊馬「頼む!お前の力で奴らの居場所を探しだしてくれよ!!頼むよ!!頼む!!!」


 無意識に遊馬はカイトの襟を掴んで必死に頼み込んでいた。異世界に詳しいカイトならなんとかなる。そんな居ても立ってもいられない遊馬の頬を、カイトは思い切り張り倒した。


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遊馬「――――――!!!?」


カイト「―――落ち着け。見苦しいぞ」

遊馬「カイ…ト……」










・・・・・・



アストラル『ベクターがワタシ達に渡したこのナンバーズ……』


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 皇の鍵。幾つものギアが重なり合ったその飛行船の中で、アストラルはベクターから受け取った「No.66」のカードを見つめた。カードは、アストラルの意思に応えるように、その形を変え、幼虫を模した黄金の鍵へと変化した。「マスター・キー・ビートル」が変形する前の姿だ。


 先端の鍵になっている部分は皇の鍵と同じように見える。どちらも同じ鍵。


アストラル『これは……!!』


 鍵は意志を持っているかのように飛行船内を飛び始めた。そして、飛行船の真下の空間に鍵は沈んで消えた。気づけばアストラルの頭上には、立体的に表示された球状の空間図が浮かんでいた。中にはある点がここへ来いとでも言うかのように点滅している。


アストラル『何かの地図―――――?』














小鳥「ちょっとぉ!開けなさいよ遊馬!!」

徳之助「開けるウラー!」


 ハートランド正面ゲート前。普段はテーマパークとして運営しているハートランドもとっくに日が沈んで閉園時間になった。明日の開園時間まで開かないゲートには、先ほどカイトが遊馬とシャークを連れて通ったのだ。



小鳥「もー!遊馬ったら私たちをのけ者にしてー!」

キャッシー「許せにゃい!!」

徳之助「こうなったら、裏の裏ウラ」

鉄男「うえ?」













 ハートランド中央、ハートの塔。そこはかつて、遊馬、シャーク、カイトの三勇士がベクター操るフェイカーと激しい戦いを繰り広げた場所。そして、今は天城親子が平和に住む住居でもあった。もっとも、ハートのモニュメントは崩壊した事件以来のままなので、シンボルのハートは今やそこにはない。


 誰にも邪魔が入らないということで、遊馬は二人に事情を話した。もちろん、真月の正体は明かさずにただの友達、という設定で。


凌牙「それじゃ、真月を攫ったのはDr.フェイカーやトロンを操っていたバリアン・ベクターってヤツだってのか?」


 一通り遊馬の話を聞いたシャークが話をまとめる。


遊馬「あぁ。“あの時”のデュエルでヤツは消滅していなかった……。」

カイト「なるほど。そして再び、我々の前に姿を現したのか。」

凌牙「へ!面白ぇじゃねぇか、ベクター!地の果てまで追い詰めてやるぜ!!」


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 元々シャークがこの一件に関わっているのは、妹・神代璃緒を意識不明にまで追いやったトロン一味を裏で暗躍していたバリアンへの復讐が目的だからだ。負の連鎖で続きかけた復讐の決闘を断ち切ったのは他ならぬ遊馬である。


カイト「だが、どこを探すというのだ?我々はバリアンの事を何も知らない。」

凌牙「関係ねぇ!オレはベクターって野郎に貸しがある!必ず探し出してぶちのめす!!」

カイト「――――――短絡的な考え方だな。」←弟の事になると同類になる男

凌牙「な・ん・だ・と!!てめぇ!!」←イラっときた


 その時、アラームが部屋に鳴り響き、突如立体モニターからオービタルの顔が映し出された。


オービタル『カ、カイトサマ!タタ、大変デス!!我々ガイル塔ノ真上ニ、非常ニ強イ重力変化ガ!!!』


カイト「―――!!?まさかバリアン!!!」


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 攫われた真月。残されたカード。ベクターの鍵とバリアン世界。次から次へと巻き起こる展開に三勇士達はもはや引き返せなかった。







第95話「いざ決戦の地へ!皇の鍵の飛行船 発進!!」



 オービタル7の通信から急いで屋上へ駆け上る三人。崩壊したままのモニュメントの土台が不気味に並ぶ屋上に三人は立って、上を見上げた。

 そこには夜の暗さとは別の闇が広がっていた。巨大に渦巻く雲の中で、捻れたように空が波を打っていた。



 この異常事態にリンクするかのように、遊馬の胸元で鍵が光った。しかし、いつもアストラルが出てくる時とは違う、強い光が三人を照らした。やがてその光は稲妻のように空へと上り、渦巻く雲の中心に吸い込まれるように流れていった。


 そこから生じたのは、見慣れた光景だった。星が弾けるように輝き、渦巻く空間が収束して形になるあの感覚。ARビジョンが見せる、エクシーズ召喚時の演出にそっくりだ。


 余りの眩しさに手を翳して光を遮る三人。しかし、光が収まってその手を下ろすと、空しかなかったそこには超巨大な物体がまっすぐ落下してきていた。


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遊馬「―――――!!!?」
カイト「―――――!!!?」


 黄金色に輝くソレは、重力に引かれつつも自分の意志で動くかのように軌道を扇状に滑らせて胴体を横向きに反らせた。そのまま、飛び出した慣性を止める事もなく、まっすぐハートの塔の屋上に直撃する形で、皇の鍵の飛行船は着陸した。






小鳥「え―――――!」


 その様子は塔から離れたほぼ街の全景で見て取れた。小鳥達は徳之助の案で、ハートの塔と同じ高さ程度のビルに登ってその光景を見ていた。


鉄男「なんだアレ……!?」




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凌牙「な……なんだこりゃ……?」


 何が起こったのか全く事態が飲み込めないシャークとは反対に、遊馬とカイトはこれが鍵の中にあったものだという事を知っている。


カイト「これは…皇の鍵の中にあった……」
 
遊馬「なんで現実の世界に――――!?」

 突然の出来事に唖然とする三人の前に、事情を説明すべくアストラルが鍵から出てきた。


遊馬「アストラル、お前―――」

アストラル『遊馬、ワタシ達の向かうべき場所が判ったぞ』

遊馬「な、なに!!」

アストラル『先ほどのデュエルでベクターが残していったナンバーズ。あのカードがキーとなって、この飛行船が起動した。しかも、ある場所を示す座標も表示されたのだ』

遊馬「場所って……、一体どこ―――?」

アストラル『恐らく……バリアン世界。』


遊馬「バリアン世界!!!?」


アストラル『―――そうだ。ベクターはこの飛行船でワタシ達に来い、と行っているようだ。そして、君の友達もそこにいる可能性が高い。』

遊馬「真月が……」

凌牙「上等だ、やってやろうじゃねぇか!」


 概ねの事情を把握していたシャークが意気揚々と拳を握り締める。


カイト「待て。」

凌牙「?」

カイト「どうも話がウマすぎる。」

凌牙「……てめぇ、ビビってんのかよ?」

カイト「何?」

凌牙「怖ぇのなら留守番でもしてな」



遊馬「いい加減にしろよ!!オレは真月を助けるんだ―――――!!!そのためならオレ、一人でも行く。」


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 遊馬の決意は変わらない。それほどまでに、遊馬の中で真月は掛け替えのない存在になっていた。シャークやカイトがバリアンに復讐したい気持ちもわかるが、遊馬には真月を取り返すことが最優先だった。


アストラル『――――分かった。今、飛行船はエネルギーを充填中だ。出発は明日の朝……。』






小鳥「ねぇ遊馬ってば!ねぇ、あの飛行船って何なのよ!」

キャッシー「真月クンの居場所は?」


遊馬「だーから!!“飛行船で真月を助けになんか行かねぇったら”!!!!」


 三人と別れて帰り道、待ち伏せしていた小鳥達に質問攻めにあった遊馬は、嘘を通そうとして逆に口が滑ってしまった。


遊馬「じゃ、じゃなー!!みんな!!!」


小鳥「あー!逃げるなー!」

キャッシー「待てぇ!!!」


 思わずいつものネコ語が抜けるキャッシー。その様子に思わず周りのみんなが威圧されてしまった。








璃緒「え、アストラルの飛行船で?」


 街を一望できる公園の展望広場。高台住まいの神代兄妹は、大切な話をする時はいつもここに来て話している。


凌牙「あぁ。ベクターとか云うバリアンが誘ってきやがった…。」

璃緒「凌牙……。」


 フェイカーを操り、トロンに復讐のきっかけを与え、結果的に璃緒にひどい仕打ちをしたバリアン。全てを背負っているつもりのシャークだったが、事情が事情なだけに敢えてシャークはその全てを明かした。


凌牙「お前をあんな目に合わせて、オレ達の人生をメチャクチャにした野郎だ……!許しておけねぇ!!今度こそ、叩き潰してやる!!!」

璃緒「“私達のため……”。ふふ、素直じゃないんだから」


 それがとても嬉しい事のように、璃緒は微笑んだ。


凌牙「……。どーいう意味だ?」

璃緒「まっ、いいけど。私も行きますからね」

凌牙「な、何でお前が!!?」

璃緒「もう決めたから!!」


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凌牙「うぅ……」


 それ以上聞かないで、と言うように璃緒はシャークの口の前に指を当てる。どんなことがあろうと、これを言った後で璃緒が意見を曲げた事はシャークの中では無かった。


璃緒「そうと決まったら早く帰って準備をしましょう!」


 浮き足だった様子ではしゃぐ璃緒は、さっとヘルメットを被って後部席に座った。早く回して、とねだる視線をヘルメットの下から察知しつつ、ため息混じりにシャークはバイクに跨った。














遊馬「うんめぇ!!!今日のデュエル飯すんげぇうめぇ!!!」


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 テーブルに出された品を全て一口で放り込んですぐさまかき込む遊馬は、いつもの5割増で夕食を頬張っていた。


オボミ『バカ、オカワリ』


 オボミが茶碗を遊馬に渡す。瞬時にそれを受け取って再びおかずと一緒に放り込む遊馬。


お春「なんだい?いつもと変わりないけどねぇ……?」

遊馬「ばあちゃん、いつもありがとうな!あ、姉ちゃん!仕事忙しいのか?」

明里「うぇ!?な、何よいきなり……!」


 夕食時に飯とデュエル以外の話をする遊馬はかなり貴重だ。ましてや自分の事を心配された経験なんか数える程しかない明里は、違和感しかない遊馬の問いかけに鳥肌が立っていた。


遊馬「そうだ姉ちゃん!肩揉んでやるよ!!」


 そんな明里の様子も意に介さず、遊馬は後ろに回って姉の肩を解す。


遊馬「ばあちゃんもオボミも後でな」←ロボも揉む気











 その晩。出発を明日に控えて緊張が高ぶる遊馬。ふと、真月から受け取ったカードを見つめる。


遊馬「真月……。お前に貰ったこのカードを使って……、必ずオレが……」

アストラル『遊馬。』

遊馬「あ、アストラル!」


 不意に後ろから話しかけられて、遊馬は慌ててカードを隠した。


アストラル『分かっていると思うが、この戦い厳しいものになる。』

遊馬「あぁ。わかっているさ!でもオレ、絶対に真月を助けたいんだ!だから、このデュエルに敗ける訳にはいかねぇ!」








明里「ねえおばあちゃん…。なんか、遊馬のヤツ変じゃなかった?全く何企んでるんだか……」

お春「あの子、一馬にそっくりだよ…。」

明里「え?」

お春「とんでもなく危ない冒険に出る時は、決まって一馬もあんな感じだったからねぇ……」


 一瞬、小さい頃に見た父親の面影を明里は思い出した。まだ幼かった遊馬が知らない父の顔を、明里は遊馬以上に知っている。


 危険なことをしようとしているなら姉として止めるべきだ。前々から危険な事に関わっているのは知っていたが、あの様子だと今度が一番危険かもしれない。


明里「じゃ、じゃあアイツ――――!!ちょっと聞いてくる!!」

お春「おやめ」


明里「―――だって…!」

お春「あたし達にできることは、あの子を見守ってやることだよ……。」


 暖かくもぽつりと呟いたその言葉は、父が失踪した時と同じように、どこか寂しそうに聞こえた。



















 ハートランドの中心はテーマパークである。夜の間は閉園になっているが、街のシンボルとして常に照明は輝いている。星空の光をかき消すほどのネオンに照らされて、ハルトは窓の向こうをじっと見つめていた。


ハルト「兄さん?」


 扉の電子音がして、カイトがやってきた。兄が何を言いに来たのか、ハルトにはもう察しがついていた。


ハルト「兄さん、行くんだね。バリアンと戦うんでしょ?」

カイト「――――あぁ。」


 穏やかにカイトは微笑みかけた。自分にしか向けない兄の顔だ。


ハルト「ごめんね。ボクのために……」


 自分の力を知っている。バリアンに与えられた破壊の力だ。それがベクターの手によってアストラル世界への攻撃に使われていた事もハルトは知っている。だから、カイトはハルトを苦しめたバリアンを許せない。今までずっと追い続けてきた闇に、その手が届こうとしているのだ。だから、ハルトは止めなかった。ただ、謝ることしかできなかった。


カイト「いや、それだけじゃない。この戦いは、俺のけじめを付けるためでもある…。」


 カイトは腰を下げて膝を立てた。こうするとちょうどハルトと同じ目線になる。震える声で謝るハルトの肩にぽんっと手を乗せて、カイトはいつもより1オクターブ低い声で囁くようにハルトに言った。


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カイト「大丈夫。俺は敗けない。そして必ず帰ってくる」

ハルト「うん。約束だよ」


 ハルトは安心した。カイトが自分との約束を破ったことなんか、一度もなかったからだ。


















 早朝。遊馬は部屋にあったカードと夜中に冷蔵庫から頂戴した食料をバッグに詰めて、自分の部屋の窓から外へ出た。玄関から出て行ったら気づかれるし、こんな荷物を背負って言い訳はできないからだ。


遊馬「へへ」


 学校へ行く時は明るい自分の家の玄関前を忍び足で歩く遊馬。しかし、その努力は虚しく終わる。


お春「遊馬。」

遊馬「―――!」


 呼び止められてドキリとする遊馬。振り返って玄関の方を見ると、お春ばあちゃんと明里、それにオボミも揃って遊馬を待っていた。


遊馬「み、みんな……。」

オボミ『バカ、忘レ物ダ。』


 オボミが小包を放り投げる。三角形の暖かな温もり。作りたてのおにぎりの感触。


遊馬「デュエル飯…。」

お春「行っといで…。」

オボミ『バカ、気ヲ付ケロ。』


遊馬「ばあちゃん……オボミ……。」


 全部お見通しだったのだ。遊馬がいくら取り繕うと、何を隠そうと。


明里「お、おほん!」

遊馬「―――」


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明里「ちゃんと夕飯までには戻ってきなさいよ。わかった?」


 色々悩んで考えた台詞を明里は照れくさそうに言った。


遊馬「姉ちゃん……あぁ!!行ってくるぜ!!!」


 なぜ、何のために行くのか。みんなは聞かなかった。遊馬も言わなかった。


 それでいいのだ。


 ちょっと行って、すぐ戻ってくるだけ。いつもと同じだ。ただ、出発が朝早くだっただけ。





 ただ、それだけだった。




















遊馬「おーっす!みんな早ぇな!」

凌牙「け、お前が遅ぇんだよ。」


 昨日言い合わせた通りに、カイトとシャークは遊馬を待っていた。


璃緒「おはようございます」

遊馬「てか妹シャーク!?なんでお前までここに!!?」

璃緒「“妹シャーク”って呼ばなさいで!!!―――――きっとお役に立てると思いますわ。」


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遊馬「シャーク、いいのかよ?」

凌牙「言いだしたら聞かねぇからな……。」


 諦めた様子でシャークは言った。結局あれから説得はしていない様子。


遊馬「へへ、頼もしい仲間が揃ったぜ!」

アストラル『遊馬、いつでも出発できるぞ』

遊馬「よっしゃあ!んじゃあ行くぜ!!――――――ん?でもどうやって乗り込むんだ?」


 屋上に乗っているだけで、飛行船に搭乗口など無い。カイトは飛べるが、他のメンバーをどうするかまでは遊馬は考えていなかった。




 すると、飛行船から光の輪が幾重にも重なって遊馬達の周りだけを包み込んだ。ふと遊馬は「ギャラクシー・デストロイヤー」に乗り込むエスパーロビンみたいだなと思った。


アストラル『このフラッシュトランサーでコクピットの中に入れる。』

遊馬「おぉー……って何だ!!?」


 そのタイミングを待ってましたと言わんばかりに、小鳥を筆頭にしたナンバーズクラブが一斉にフラシュトランサーの中に飛び込んできた。


遊馬「お前何でここに!?」

キャッシー「抜けがけはひどいキャット!」

等々力「そうですよー!」

徳之助「遊馬、黙っていくなんて水臭いウラ!」


遊馬「でも、お前達を巻き込む訳には――――」

鉄男「オレたちだって真月を助けたいんだ!」

小鳥「真月くんは、私にとっても大切な友達よ!!」


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遊馬「――――――お前ら。」


 それ以上遊馬は何も言えなかった。自分だけが心配している訳じゃない。その気持ちが遊馬にはありがたかったのだ。


アストラル『では、乗り込むぞ。』


 光が一瞬周りを覆うと、次の瞬間には屋上風景が機械仕掛けの部屋に様変わりしていた。





 様々なバロメーター、モニターには色々な立体図といくつもの数値の羅列。あちこちにある端末には、どれもこの世の世界の言葉は使われていない。


遊馬「ここがコクピット……。すっげぇ!!!」


 それは飛行船というより、宇宙船のコクピットに見えた。窓から見える景色は街を一望できて、確かにここがハートランドの屋上の上である事を物語っていた。


アストラル『目標座標確認。ただ今より、この船は出航する。』


徳之助「アストラルの姿がオレ達にも見えるウラ!」

鉄男「あぁ!」


 この飛行船はアストラル世界のもの。ここでは精神体であるアストラルも、実態として知覚されるようだ。


璃緒「あれが…アストラル……。」






オービタル『発進シークエンススタート!全システムオンライン、主導力コンタクト!オールシステムズ、正常動作ヲ確認!!』


 機器の操作は全てオービタル7が請け負っている。


アストラル『遊馬、君が指示を出せ。』

遊馬「え、オレが!?」


カイト「――――今回ばかりはお前に華を持たせてやろう。」

凌牙「おら、とっととやれよ!」


 なぜか満足気に二人は遊馬に促した。ある意味では、この二人にも待ちに待った瞬間なのだ。


オービタル『発進準備完了!』


遊馬「5……4……3……2……1……」




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遊馬「発進!!!」





 地鳴りのようにコクピットが揺れる。それと共に、周りにある機器が一斉に激しく動き出した。窓の外に流れる雲は次第に早く動き、ふわりと体が一瞬上に持ち上がる感覚が伝わる。


遊馬「うおおおお!!飛んだぜええ!!」


 傾きながらもまっすぐ空を目指す飛行船は、遊馬の舵を頼りにハートランド上空を飛んでいた。


遊馬「いっけえええええ!!!」


オービタル『異次元ゲート開門。』


 オービタルの操作によって、飛行船は眩い光を放つ。それは、ベクターが消えたあの時と同じように、目の前に不気味に光る空間が開いている証だった。


オービタル『コレヨリ異次元空間ニ突入!』










 やがて青空は消え、窓の外には七色に光る不思議な世界が広がっていた。







ベクター『さぁ、来るがいい!!!九十九遊馬、アストラル!!!!!!』














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・・・・・・




オービタル『現在目標座標ニ向カイ、順調ニ航行中。』


鉄男「これが異次元トンネル…」

徳之助「静かウラ〜」

等々力「そうですねぇー」



アストラル『……だが、静か過ぎる。』



小鳥「そうだ!私おやつ持ってきたんだ!」

キャッシー「わー!」

遊馬「おぉー!オレもばあちゃんがデュエル飯作ってくれたんだぜー!よーし、みんなで食うかー!」

凌牙「全く遠足気分かよ。」←さっきまでそわそわしてた人


遊馬「ばあちゃんのデュエル飯は――――?!」


 その時、突然赤いランプと共に異常アラームが鳴り響く。


遊馬「どわ!!」


 それとほぼ同時に船体が傾く。何か激しい衝撃を受けたような揺れが飛行船に響いた。


小鳥「きゃあ!!」

カイト「なんだ、この衝撃は!?」

璃緒「飛行船前方、多数の未確認物体を確認!」


 いつの間にかマニュアルに目を通していたのか、素早い手つきで璃緒がパネルを操作して状況を分析する。目の前のモニターに表示された映像には、こちらに向かって迫ってくる多数のデュエルモンスターの姿が映っていた。


遊馬「これは……モンスター!?」


凌牙「左舷にもうじゃうじゃいるぜ!」

カイト「こっちもだ!!」

小鳥「囲まれたわ!」


遊馬「く―――――カイト、シャーク、行くぜ!!」


璃緒「私も!」

鉄男「オレも行くぜ!!」




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 フラッシュトランサーで飛行船の表面に飛び出した遊馬達は、多数のモンスター達が飛行船に攻撃している光景を目の当たりにした。


遊馬「ぐ――――!!!現れろ、《No.39 希望皇ホープ》!!!」


 すぐさま遊馬はエースカードを掲げる。皇の鍵の中と同様に、こういう空間でカードが実体化するのはなんとなくわかっていた。


カイト「来い!!《銀河目の光子竜》!!!!」


凌牙「現れろ!!《No.32 海咬龍シャーク・ドレイク》!!!!」


璃緒「現れなさい!!《零鳥獣シルフィーネ》!!!」


鉄男「来い!《ブリキの大公》!!」




 それぞれのエースモンスターを召喚する一同。攻撃力は下級打点ラインなので、攻撃すれば簡単に撃破できる。


遊馬「いっけぇホープ!!!“ホープ・剣・スラッシュ”!!!!」

カイト「“破滅のフォトン・ストリーム”!!!!」

凌牙「“デプス・バイト”!!!!」←アニメでは言ってない

璃緒「“アイス・レイン”!!!!」

鉄男「“大公の一撃”!!!!」←うろ覚え






遊馬「へ!どんなもんだ!」

アストラル『おかしい。』

遊馬「え?」

璃緒「手応えが無さすぎる――――。」


 送り込まれたモンスターはどれも攻撃力がそこまで高いわけじゃない。まるで、そちらに攻撃を陽動したかのような…。


凌牙「何を狙っていやがる……」



オービタル『カイトサマ!!』

カイト「何だ?」

オービタル『大変デス!船ノ進路上ニ巨大ナブラックホールガ出現シマシタ!』

カイト「なんだと!!」


 オービタルの通信を受けた直後、飛行船前方に巨大な闇の渦が突如現れた。明らかに周囲の空間を侵蝕して吸収している大穴、ブラックホールだ。


遊馬「どわぁ!!!」


 船体がバランスを崩す、まっすぐ闇に引きずり込まれる飛行船。視界が真っ暗になり、呑まれた全員は徐々に意識を失っていく。


「ああああああああああああああああああああ!!!!!」


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小鳥「遊馬ああああああああ!!!!」


















・・・・・・




アストラル『遊馬、遊馬!』

遊馬「あ……」


 アストラルの声がして遊馬は目を覚ます。ぼんやり開いた視界には、心配そうにこちらを見つめる相棒の姿があった。


アストラル『大丈夫か?遊馬』

遊馬「アストラル……ここは?」

アストラル『わからない。だが、バリアン世界ではなさそうだ』


 遊馬は体を起こして辺りを見回した。何も無かった異次元トンネルにも足場はあるらしい。立ち上がって周りを見た時、無重力に浮かぶ朽ち果てた巨大な空母が遊馬の目に止まった。不気味に明るい闇の中、戦争の残骸とでも云うように漂う船は、海の底にある深海のようだ。


遊馬「じゃあ、オレ達は……」


辺りを見回したが誰もいない。広大な音もない空間に二人だけだった。


アストラル『しかし、この場所は――――』







ベクター『ようこそサルガッソへ。』


遊馬「!?」

アストラル『!!?』


 誰もいなかったハズだ、だが声のした方を振り向いた。そこには忘れられないあの男が不気味に立っていた。


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ベクター『待っていたよ九十九遊馬、そしてアストラル!!!』

遊馬「お前はベクター!!!」

ベクター『ワタシのモンスターのお出迎え、楽しんでもらえたかなぁ……!』

遊馬「やはり…アレはお前が……!?」

アストラル『ここはどこだベクター!!!』

ベクター『異世界の墓地サルガッソ。貴様達が最後に見る場所さ!!』

遊馬「ベクター!!真月は……真月はどこだ!!!」


ベクター『フフフフフ。そんなに会いたいかい?』


 必死に問いかける遊馬の様子を楽しむように、ベクターは指をぱちんと鳴らした。


 それに合わせて、真月がベクターの目の前に現れる。倒れたまま、動かない。


ベクター『なら、合わせてやる。貴様のお友達になぁ!!!!ハハハハハハハ!!!』


遊馬「真月―――――」


 眠ったように安らかな真月の表情とは裏腹に、体は傷ついたままボロボロだった。


遊馬「真月!!!おい真月!!!!ベクターてめぇ、真月に何をした!!!?」


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ベクター『残念だがお前のお友達はもう“二度と目を覚ますことは無い”』



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遊馬「――――――――――――――」








 一瞬世界が止まった。アイツがナニを言っているのかワカラナイ。



遊馬「そんな……嘘だろ……」


ベクター『ンフフフフフフフフフヒャハハハハハハハハハハアハハハハハハハハハ!!!!!!!!!』


 これ以上ないくらい異常な笑い声が、無情の墓地に反響した。何度も笑いあったあの笑顔はもう二度と見れない。遊馬の頭の中で、走馬灯のように駆け抜けていく。それはもう遠い遠い過去のように。







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 『はい!よかれと思って!』






遊馬「しんげつうううううううううううううううううううううううううう!!!!!!!!!」





小鳥「遊馬……。」


 その様子を別の空母から見ていたシャークとカイト。





凌牙「遊馬…。」

ドルベ『お前が神代凌牙か?』

凌牙「誰だてめぇ」

ドルベ『我が名はドルべ。お前をデュエルで倒す者。』

凌牙「ほう。オレがぶっ倒すバリアンの一人として、この胸に名を刻んでおいてやるぜ」

ドルベ『――――。』









ミザエル『久しぶりだな、カイト。』

カイト「ミザエル……。」

ミザエル『フフフ。今日こそは誰が真の「銀河眼」使いか、はっきりさせてやる』

カイト「望むところだ!!ミザエル!!」







ベクター『まぁそう悲しむな。お前らもすぐコイツに会えるさ!なぜならぁ?ここから生きて帰ることができないからだぁ!!!ッハハハハハハハハハ!!!!』














 真月は■された。






 アイツが真月を■した。




 アイツが真月を■した。







 アイツガシンゲツヲ■シタ。








遊馬「許さねぇ、絶対に許さねぇ!!!!!ベクタアアアアアアアアアアア!!!!お前を必ず叩き潰す!!!!!!」



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「「「いくぜ、デュエルディスクセット!!!」」」



「「Dゲイザー、セット!!!」」



 両者合わせて構える。ドルベとミザエルはマントを解き、ディスクを構えた。


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「「「「「「デュエル!!!!!!!」」」」」」













小鳥「遊馬……。」




遊馬「オレのターン、ドロー!!!」


●「オレは《ゴブリンドバーグ》を召喚!!このカードの召喚に成功した時、手札からレベル4以下のモンスター1体を特殊召喚できる!!」


《ゴブリンドバーグ》
☆4/地属性/戦士族/攻1400/守 0
このカードが召喚に成功した時、手札からレベル4以下のモンスター1体を特殊召喚する事ができる。この効果を使用した場合、このカードは守備表示になる。


●「来い!《ガンバラナイト》!!!」


《ガンバラナイト》
☆4/光属性/戦士族/ATK 0/DEF1800
フィールド上に表側攻撃表示で存在するこのカードが攻撃対象に選択された時、このカードの表示形式を守備表示にする事ができる。


●「オレはレベル4の《ゴブリンドバーグ》と《ガンバラナイト》でオーバーレイ!!!」


「2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!!!」


「現れろ!!《No.39 希望皇ホープ》!!!!」


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《No.39 希望皇ホープ》
ランク4/光属性/戦士族・エクシーズ/ATK2500/DEF2000
レベル4モンスター×2
このカードは「No.」と名のつくモンスター以外との戦闘では破壊されない。自分または相手のモンスターの攻撃宣言時、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動する事ができる。そのモンスターの攻撃を無効にする。
(※アニメ効果)



ベクター『ほぅ?いきなりエース召喚とは余裕がないなぁ…うん?』


遊馬「てめえええええ!!!!」


アストラル『遊馬!気持ちは解るが落ち着くんだ!!』






●「オレは《ダブルフィン・シャーク》を召喚!!」


《ダブルフィン・シャーク》
☆4/水属性/魚族/ATK1000/DEF1200
このカードを水属性モンスターエクシーズのエクシーズ素材とする場合、1体で2体分の素材とする事ができる。


●「さらに、オレのフィールドに水属性モンスターがいる時、《サイレント・アングラー》を特殊召喚できる!!」


《サイレント・アングラー》
☆4/水属性/魚族/ATK 800/DEFXXXX
自分フィールド上に水属性モンスターが存在する場合、このカードは手札から特殊召喚する事ができる。


●「そして、《ダブルフィン・シャーク》はエクシーズ素材となる場合、1体で2体分となる!!」


●「オレはレベル4の《ダブルフィン・シャーク》と《サイレント・アングラー》でオーバーレイ!!!」


「2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!!!」


「吠えろ!!《No.32 海咬龍シャーク・ドレイク》!!!!」


20130320132930


《CNo.32海咬龍シャーク・ドレイク・バイス》
ランク4/水属性/海竜族・エクシーズ/ATK2800/DEF2100
水属性レベル4モンスター×4
このカードは自分フィールド上の「No.32 海咬龍シャーク・ドレイク」の上にこのカードを重ねてエクシーズ召喚する事もできる。自分のライフポイントが1000以下の場合、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除き、自分の墓地の「シャーク」と名のついたモンスター1体をゲームから除外して発動できる。フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択し、その攻撃力をこの効果でゲームから除外したモンスターの攻撃力の数値分ダウンする。
(※アニメ効果)


ドルベ『……。』







●「俺は《フォトン・スラッシャー》を特殊召喚!!このカードは、自分フィールドにモンスターがいない時、特殊召喚できる!!」


《フォトン・スラッシャー》
☆4/光属性/戦士族/ATK2100/DEF 0
自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、このカードは特殊召喚する事ができる。自分フィールド上にこのカード以外のモンスターが存在する場合、このカードは攻撃する事ができない。
(※アニメ効果)


●「さらに、《フォトン・デルタ・ウィング》を召喚!!」


《フォトン・デルタ・ウィング》
☆4/光属性/機械族/ATK1800/DEF 900
自分フィールド上にこのカード以外の「フォトン・デルタ・ウィング」が存在する場合、相手プレイヤーは攻撃宣言をする事ができない。



●「俺はレベル4の《フォトン・スラッシャー》と《フォトン・デルタ・ウィング》でオーバーレイ!!!」


「2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!!!」



「現れろ!!!《輝光帝ギャラクシオン》!!!!」


20130320132942


《輝光帝ギャラクシオン》
ランク4/光属性/戦士族・エクシーズ/ATK2000/DEF2100
「フォトン」と名のついたレベル4モンスター×2
1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を2つまで取り除いて発動できる。この効果を発動するために取り除いたエクシーズ素材の数によって以下の効果を適用する。
●1つ:手札から「銀河眼の光子竜」1体を特殊召喚する。
●2つ:デッキから「銀河眼の光子竜」1体を特殊召喚する。




ミザエル『カイト―――。』






ベクター『フフフフフ!!!バカめ!!!』


○「フィールド魔法《異次元の古戦場−サルガッソ》の効果発動!!!!」


《異次元の古戦場−サルガッソ》
フィールド魔法
エクシーズ召喚に成功する度に、そのプレイヤーは500ポイントダメージを受ける。また、エクシーズモンスターをコントロールしているプレイヤーは、それぞれ自分のエンドフェイズ毎に500ポイントダメージを受ける。


 突如飛来したダメージ。既にここには敵の罠が張り巡らされていた。



遊馬「ぐあああああああああああああああああああ!!!!」
凌牙「あああああああああああああああああああ!!!!」
カイト「ああああああああああああああああああ!!!!!」


 ARでは絶対にありえないダメージが三人に襲いかかる。


アストラル『遊馬!!!』


遊馬LP4000→3500
凌牙LP4000→3500
カイトLP4000→3500


遊馬「なんだこれ……」


アストラル『まさか……このフィールドは……』



ベクター『ハハハハハハハハハアハハハハハハハッハハハハハハハハ!!!!!!!!!!』


20130320132950


 狂った叫びが木霊する。狂気の墓場で、三人はかつてない戦いに身を投じた。
















20130320133000
次回、「凶気のベクター 魔境サルガッソの闘い!」







 

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