選択肢付き短・中編

□王様ゲーム

 解っていたとばかりに唇を歪める古泉に、目で変なことはするなと言うと、微かにだが古泉がうなずいた。それこそ、長門よりも小さく。
 これならだいじょうぶだろうと思ってもやはり恥ずかしいものは恥ずかしく、目を瞑ってそっぽを向いていた俺なのだが、それで頭を撫でるなどできるはずがなく、仕方なく古泉を直視するとにやけきっただらしない顔をしていた。
 思わず殴りそうになった拳を緩めて、頭を撫でるとふわりとした柔らかい髪の感触が感じられた。
 色素がうすい、茶色がかった髪。一本一本は細いくせに、量が多いのか物足りなさは微塵も感じない。試しにとかすように指をくぐらせても、絡まることなくスムーズに流れる。
「あの、もうそろそろ……」
 思わず夢中になっていたらしい俺は、古泉のその言葉で我に返った。
「っわ、すまん!」
 俺が慌てて立ち上がった結果、古泉は頭を床にぶつけたらしかった。らしい、というのは俺がその場面を見ていなかったからであり、ごん、と鈍い音を響かせた後、後頭部辺りを押さえてうめいているというシーンから想像した結果だからだ。
「痛いですよ……」
 やっと立ち上がったもののまだ古泉は頭をさすっている。
 ……いや、本当すまん、古泉。
 家でまた膝枕してやるから、許してくれ。

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