歌モチーフ

□鳥の夢/小野大輔
2ページ/3ページ

 人を結ぶはずの言葉が、僕らを遠ざける。
 それは、僕がそういう意図を込めているからでもあるのだけれど。
 こんな嘘だらけの僕を信用してほしくない。
 僕にだって僅かながら言えることはあるけれど、それを言ってしまえば優しい彼のことだから、僕が吐いた嘘でさえ信じてしまうのだろう。
 そんなことしたくない。
 言語でないもので概念を伝えたいと思う僕は、欲張りなのだろうか。


「……っ、お前なんか、大っ嫌いだ……!」
 無音の部屋の中、絞り出したような彼の声だけが耳に焼き付いて離れない。
 僕が望んだ結果なのに、とうしてかもやもやが晴れなかった。
 愛しいと思っていた日々は思い出にもできないまま消えてしまった。
 けれど。
 ひとつだけ、僕にわがままが赦されるのだとすれば、この部屋で見た夢を絶対に忘れない。






次ページあとがき
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ