歌モチーフ

□magnet/初音ミク・巡音ルカ
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 最初はわずかだった熱がだんだん燃え広がり、身体中を熱で支配される。
 夢中で古泉を抱きしめ、蝶が鱗粉をつけるようにあちこちに自分の跡を残していく。
 そうして、絡み合っている手の甲に口付けた。
 それがこの行為をもっとして欲しいとねだっているのと同じだと知りながら。
「見えるところに残すなんて……いけない子ですね。悪い子にはおしおきをしなくてはなりません。あなたもそう思うでしょう?」


 彼は声も出さずにこくこくとうなずき、おとなしく手を後ろで組んだ。
 彼の手の温もりが残っているうちに僕は次の暖かさを求める。
 自由になった指で彼の唇をなぞり、口を開けと動きで命令する。
 もちろん彼がそれに逆らうはずもなく、素直に口元の力を緩めた。
 彼が自分から開かないのはそうしたほうが僕が喜ぶと知っているからだろう。
 薄く開いただけのわずかな隙間から指を入れ、知り尽くした口腔内を動き、歯をなぞり、舌をくすぐった。
 この行為自体も、彼とこんな関係になったことも、許されることではない。
 能力に目覚めたあの日以来、神様の怒りを買わないようにご機嫌を取る為だけに生きているのが僕だから。
 でも、許されないからこそ余計に燃え上がる。
 離したくない。


 痛いくらい抱きしめて欲しい。
 そうすれば、俺の中に渦巻いている妙な罪悪感も消えてしまうかもしれない。
 噛みつくようにキスをして欲しい。
 そうすれば、成り行きとはいえ古泉以外とキスをしてしまったことも塗り替えてしまえるのかもしれない。
 古泉のことを感じられるならもうなんでもいい。
 ただこの時間にいつまでも酔っていたいと思う俺はもう溺れているのだろうか。


 束縛して、数えきれないくらい体を重ねてもまだ不安になる。
 彼を必要としているのは僕だけなのではないかと思えてしまう。
 ──もっと彼が欲しい。
 愛しいのは僕だけじゃなく彼も同じなんだと知りたい。
 ──もっと執着して欲しい。
 彼を縛り付けて僕だけのものにしてしまえばそれが出来ると思い、あまつさえ実行してしまった僕は「おかしい」のだろうか。
 それならそれに抗ないもしない彼も「おかしい」のかもしれない。
 二人ともおかしいならそれでいい。
 むしろ、彼が以前には絶対に見せてくれなかった顔を見せてくれることにどうしようもないほどの愛しさを感じる。
 行けるところまで行ってしまえばいい。
 その先で全てを失ったとしても、彼だけいればいい。


 迷い込んでここがどこなのか、何が欲しいのかさえも解らなくなった心ならキスをされるだけで簡単に融けていく。
 首に、肩に、背中に、胸に、腹に、脚に。
 古泉が唇を触れただけで震えるほど感じるのに、吸い上げられてさらに興奮が昂る。
 優しさなんてない。
 優しさなんて要らない。


 愛してると言ってしまったのは僕で、それに応えてくれてしまったのは彼だ。
 長い間越えられなかったその壁を破ってしまえばあとは簡単だった。
 衝動に任せるまま抱きしめて、キスをして、舌を絡めて、隅々まで跡を残して、体を繋て、そこまで来てやっともう戻れないと知った。
 ……それでいい。
 他の誰よりも大切なあなただから。


 夜明けは嫌いだ。
 古泉がいなくなってしまうから。
 古泉は学校だか会社だかに行っているらしく、朝になるとスーツを着て出ていってしまう。
 それでも俺に止められることなどできなくて、不安と切なさで泣きそうになる。
 目から涙がこぼれないように必死で唇を噛み締めながら無理やり笑顔を作っている俺に、古泉は優しく言うのだ。
「だいじょうぶです、必ず戻ってきますから」
 それにまた泣きそうになる。
 声の柔らかさに、髪を撫でる手の温もりに、何よりも俺よりもよっぽど痛みを感じている笑顔に。
 本当はきっと泣きたいのは古泉なんだ……
 なのになぜ俺はこんなに弱いんだろう。


 今すぐに抱きしめて欲しい。
 今すぐに気持ちを確かめて欲しい。
 俺が古泉を縛り付けたいのは間違いなどでは無いんだと解らせて欲しい。
 深い深いキスをして古泉と出会う前のことを全て塗り替えて欲しい。
 この乱れた時間がずっと続いて欲しい。

 彼が欲しい。
 この体の下に組み敷いてめちゃくちゃに壊してやりたい。
 僕を彼の中に残していけばたとえいつか離れても巡り会えるかもしれない。
 いつまでも触れて、体を繋いで、それを繰り返した挙句二人ともお互いなしでは生きられなくなってしまえばいい。
 誰よりも大切なあなたとだから。


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