短・中編

□映画上映会?
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 上映会をするわよ、というハルヒの一言で、今日の活動はそれになった。
 それは百歩譲っていいとしよう。
 準備はすべて俺というのも、良くないが良いとする。
 しかし、だ。
 なぜこんなに高い位置にテレビがあるんだ!
 配線をしようにもできないじゃないか。
 ああ、誰のせいでもないと解ってはいる。
 しかし、なぜだか椅子を持ってくるだけの労働がしたくなかった。
 あるだろ? そういう時。
 何とかして差し込めないかと悪戦苦闘していると、足がふらついた。
「おわっ……」
 そのまま床にすっ転……ばない。どうしてだ。
 考えるまでもない。
「古泉、離せ」
「酷いですね」
 そう思うならにやにや笑うな。
 さっさと俺を解放してくれ。
 そう俺がいくら言っても離してくれそうもなかったので、あきらめて古泉を押し退けた。
 古泉はそれを咎めもせず、
「お手伝いしますよ」
 と有無を言わさず俺の手からコードを抜き取り、やすやすとテレビに差しはじめた。
 ……イヤミな奴め。
 俺がじとっとした目で見ているのに気がついたのだろう。古泉は軽く眉を下げて、
「どうかしましたか?」
「いや、何でもない」
「そんな顔ではありませんよ。気になります」
 顔が近い!
「ねえ、言っていただけないのですか?」
「……っ、背が高くて羨ましいと思っただけだ」
 なぜこれくらいでこんなに恥ずかしい思いをしなければならんのだ。
「それだけですか」
 何だ、そのがっかりした顔は。
「いえ、僕に見とれていたくらいは言ってくださるかと思っていたので」
「この、ナルシスト!」
 いくら公認とはいえ長門もハルヒも朝比奈さんもいるんだぞ!
 ……いや、本当、みんなすまん。
 苦情なら古泉に言ってくれ。俺は悪くない。
 ほら、ハルヒも不機嫌になってやがる。
 なんとかしろ、古泉。
「なんとかと言われましても――」
「古泉くん、あなたそこまでしたらキスするくらいの度胸はないの!?」
 そっちかよ!
 ……おい古泉、お前はどうしてそんなににやにやしているんだ。
「団長の命令には逆らえませんから……ね?」
 ね、じゃない!
 俺は公衆の面前でそんなことする気もされる気もない。
 必死で抗議をしていると、古泉に抱きすくめられた。
「キスをしたら、止まれなくなってしまいそうだから」
 常体のひそめた言葉に、思わずぞくりとする。
「これでご勘弁願えませんか」
 ハルヒに向けられた言葉に、今の状況を思い出した。
「離せ……」
 いい加減体温が上がりすぎだ。……こんなに引っ付いていたら誰だって熱くなるさ。そういうことにしておいてくれ。
「あなたのそんな可愛らしい顔を他の方に見せるわけにはいきませんので」
 どんな顔だよ、とツッコンでやりたくなったがやめておいた。
 そんなことをしたら更に恥ずかしいことを並べ立てられるのは目に見えているからな。
 当然こんな状態で顔の赤みが引くはずもなく、上映のためと暗くされた中で解放され、そのまま床にへたりこむはめになったのだった。





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