歌モチーフ
□everlasting.../茅原実里
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みんなが帰っても、あたしはまだ部室に居た。
卒業式の妙な緊張で少し疲れたみたい。
椅子から立ち上がって窓を開けると、火照ったからだを鎮めるように冷たい風が頬をなでるのが気持ちよかった。
暗くなっている校庭を眺めると、一年のときに文化祭で歌ったメロディが蘇ってくる。
うろ覚えになっていてもおかしくないのに、音程もリズムもやけにはっきり覚えていた。
歓声も、拍手も、バンドメンバーの笑顔も、びっくりするくらい鮮明に解る。
……これもきっと、SOS団のおかげね。
目に見えない光がわたしの心を埋める。
喜び、悲しみ、怒り、楽しさ、憂い、……それと、愛しさ。
すべて彼を初め、SOS団が教えてくれた。
他のインターフェースにはない機能を持てたことをわたしは誇りに思う。
そう思うことも、三年前のわたしならできなかった。
「ありがとう」
仲間を想って呟くと、自然と口元が緩むのを感じた。
この時代に来て何も解らなくて、知り合いだって居なかったあたしに仲間ができて、こんなに楽しい時間が過ごせたのも、SOS団のおかげ。
涼宮さんが力を失って、あたしは未来に帰らなきゃいけなくなった。
寂しくて仕方がないはずなのに、あんまり実感はない。
涼宮さんのおかげかな。
彼女の行動力があれば、時間の壁なんてたいしたことないと思えるから不思議。
あたしはSOS団以外からあたしの記憶と記録を消さなきゃならないから、何も残せなかったけどせめてSOS団だけには何か返せたかな。
うん、だいじょうぶ。
涼宮さんだもん。