荒磯老人ホーム+WA


□再会(真田編)
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ある日の昼下がり。

老人ホームでの昼食を済ませ、いつもの散歩道を時任と二人、手をつないで歩いていると・・

傍らの車道に黒塗りのベンツが乗り付け、ドアが開き、目の前に屈強そうな黒服の男たちが降り立った。


「ん?」

「何だぁ?」

キョトン、とする久保田老人の目の前で、車中から立派な身なりの老人が現れた。

ヨボヨボと杖を突き突き車外に立つと、老人は徐に口を開いてこう言った。


「60年ぶりだね 久保田くん」



「・・・はあ、そーでしたっけ?」

「相変わらず、そっけない男だね。
何故私が君の居所を知っているとか聞いてみるかい?」

「いや別に、興味はないです。」

「・・・・・・」

「で、御用件は?」

「会いたかった・・・だけではいけないかね?」

「・・・・」

答えない久保田の代わりに時任が間髪入れず呟いた。



「う、わ。キモー」



「君は相変わらず動物が好きなようだね」



相変わらず時任を動物呼ばわりする真田の車から、一匹の老犬が飛び出してきた。

ワンワンッ!とかすれた鳴き声を上げて久保田を見る。


「あ。 アーク・ロイヤル」

久保田に名前を呼ばれて、老犬アークは・・・



じょー・・・と、その場に「嬉ション」を漏らしてしまった。



「・・・・・・・・・・」



老犬の尿は臭いがキツイ。



「あのー、行ってもいいですか?これから見たいテレビが有るんで」


そう言い置くと、久保田は真田に背を向け、時任の手を引き、スタタタタと勢いよく歩道を進みだした。

その老人らしからぬスピーディーな歩みに、流石の真田も引きとめるのを諦め、年老いた愛犬を睨んだ。



「いけない子だ。感動の再会に水を差すなんて。 しかも、こんなに臭う水を・・」


いかに愛犬といえど、許しがたい粗相に怒髪天の真田は、懐に手を入れた。








ガウン!







銃声に振り返ると、そこには・・・・


銃弾が逸れて、キョトンと佇む老犬アークと。

発砲の衝撃で引っくり返った真田老人の姿があった。


「・・・年はとりたくないものだね、久保田くん」



「はあ」

興味無さそうな返事に続いて


「なあ、ションベンの上に寝転んでると臭い取れなくなんぞ?」


鼻をつまんだ時任が憐みの目で見つめていた・・・



「真田御大ぃ〜っ!!」

慌てて黒服の男たちが駆けつける・・・が、あまりの臭いに助け起こすのを躊躇している。




「行こうか」

「うん、久保ちゃん」



アークがウォンウォンと鳴いて呼び止めたが、とうとう久保田は振り返らなかった。



「フッ」

懲りない真田はつぶやいた。


「また会おう。」





「いや・・・いいから起きようぜ?;」

「時任ぉ、振り返らない。」


それにしても。

真田さんって、今年何歳なんだろう?


次に会う時は、告別式の遺影でお会いしたいなァ・・・


心の中で本音を吐露する久保田だった。




≪続く・・・かもしれない≫


*******************





年寄り虐待小説?

お年寄りは大切に致しましょう・・・(自分が言っても説得力、ナッシング;)


そして、真田さん御存命。

ものごっつミラクルですね。

(しかも、アークまで・・・絶対代替わりしてるってば。/笑)

ミラクル老人・真田さんが、こんなに流暢に話せるわけないんだけど(笑)話が進まないので敢えて滑舌よく御登場でした。

ホントだったら
「ふがふが・・・もごもご・・・ふほひゃふん(久保田くん)」ですよ。

何言ってるか分からなきゃ、久保ちゃんは迷わずスルーだろうし、分かったら分かったで何か無駄に真田さんを喜ばせそうだし。(愛ゆえに通じたと思われたらイイ迷惑。/酷ッ)

真田さんの次は「ちゃむ」を登場させたいのですがー。
WAでは彼は故人・・・
幽霊で御登場ですか??

思いっきり夏向きの話になりそーです。

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