*宝箱*

□honey☆sweet>もかちゃんより…相互リンク+記念  
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『紅(くれない)』



ほんの短い間だけ木々が赤く染まって―――

そして、散ってゆく。

風が吹く度、枝を揺らして削ぎ落として。

まるで………
紅(くれない)の衣みたいだ。



箒で「紅の衣」……もとい、落ち葉を掃きながら、千鶴は庭の紅葉を見やる。

父を探しに京へ来て、新撰組の屯所で暮らすようになってから随分経った。
巡察にも度々同行させて貰えるようにもなった。

仲間になれたんだと……
少しでも力になれているのだと自惚れてしまった。
幹部の方々と町へ出て、信頼関係が築かれたんだって。
そんな簡単な事では無いと分かっていたのに……。

こうして、自分で仕事を探して体を動かしても、疎外感を感じてしまう。


「………はぁ。」

ひとり溜め息をついて、後ろ向きな考えを散らすように箒を動かした。

「雪村、どうかしたのか?」

「はうっ……!?」

自分の気持ちに悶々としていたせいなのか、または相手が気配を消すのが上手いのか…………
多分、後者なのだと思う。
突然背後から聞こえた声に、千鶴は間の抜けた声をあげてしまった。

「さ、斎藤さん!」

「悪い。驚かせてしまったみたいだな……」

「い、いえ!
ぼーっとしていた私が悪いんです!」

慌てて否定する私に、斎藤さんは少し笑って何かを差し出した。

「――――――?」

何だろう?と、手のひらを斎藤さんの前に出すと、コロンとした焼き饅頭が乗せられる。

「……お饅頭、ですか?」

「この間、うちの三番組に付いて来た時、この饅頭を見ていただろう?」

「確かに見てましたけど……」


*
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