地獄逃亡計画日誌

□2.帰還
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「蓮華ちゃん!久しぶり〜!」

「閻魔大王…お変わりないようで何よりです。あ、心の方は大丈夫ですか?」

「ん?こころ?」

「こんなのと一緒に仕事なんて、いつか心を病みますよ」

哀れむような目で大王を見つめると隣に立っていた鬼灯が、また私の頭に金棒を叩きつけた。
部屋の中に豪快な金属音が響く。

「こんなのとは何です!貴女が不在の間、貴女の分の仕事をしていたのは私ですよ!」

「痛ィ!もう、頼んでないし!鬼灯ちゃんはこれだから…」

「その呼び方!やめてください!」

「あれ?覚えてない?あの時、私きちんと許可取ったよね?」

「……やっぱり調教していいですか?」

「へぇ、してみなさいな。返り討ちにしてあげるから」

考えてみれば昔からそうだった。
顔を合わせればなぜか口喧嘩ばかり。
どうやら私のだらしない素行や態度を鬼灯は気に入らないようだった。
そんな鬼灯の事を私は心底、もう本当に心の奥底から苦手だった。

「まぁまぁ、二人とも…ほら、今日は現世から帰ってきた蓮華ちゃんの歓迎会だから!仲良くしようよ!ね!」

「無理です!!」

大声で叫ぶと、ふんと私はそっぽを向いた。
もう本当に帰りたい。現世に。
だがここまで連れて来られた以上、厳重になってしまった監視から逃れることは困難だ。
何が悲しくて、苦手な野郎とまた一緒に仕事しなければならないのか。

…というか。

「大王、聞いていいですか?」

「ん?なぁに?蓮華ちゃん」

「私の後任、なんで誰もいないんですか?現世に逃げてから結構たってるし、後任決めても良かったのでは?」

「あぁ、それは…」

大王が言うより早く、まだ隣にいた鬼灯が話し始めた。
それはもう嫌みったらしく、ねちねち感満載で。

「何言ってるんですか?必ず貴女を探し出して、仕事をさせると決めていたからです」

「……」

「この私が、貴女を見つけられないとでも思ったんですか?」

「…ッ!嫌がらせか!!」

「私から逃げた罰、これから存分に味わって貰います。覚悟してください!」

半分放心状態になった私は、これからのことを想像して少し震えた。

…これは随分と厄介な鬼に喧嘩を売ったらしい。

絶対に何が何でもまた逃げてやると、帰ってきた早々私は心に決めた…−−−。

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