Drowing You.

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「さっきは自分からしおんに触ってた癖にな……」


「あんな風にイカれた奴だったとはねぇ」


身体測定の帰り道。ナポレオンと一休は同情してくれた。が、


「ある意味彼の言い分は正論だろ」


フロイトはツーンとした表情でそう言ってみせた。その言葉に、わたしは再びかぁっとなる。


「ど、どこがっ!」


「フン!」


「おいおい、お前ら、いい加減仲直りしろよ〜……」


「おい……」


間をとりなすナポレオンに、一休が思い立ったように何かを耳打ちする。やがて、ナポレオンが「おっ、それはいい!」と感嘆した。


「よーし!」


「なっ!?」「ぶっ!」


両手でわたしとフロイトを抱え込むと、


「お前らに仲直りのおまじないをかけてやるっ!」


と言いながら一休の案内でどこかへ歩き出した。


「はあ?」


「景気づけだぜっ!」


「え?」「えっ?」


二人で目を白黒させ疑問符を飛ばしても、彼らはただふっふっと笑うだけで何も答えてくれない。


やがて、ガラッとどこかのドアが開く音。


「よしっ、おりゃ!」


ナポレオンが笑顔でわたし達を部屋の中へ突き放す。わたし達は悲鳴を上げながら倒れこんだ。


「いてて……」


背後でドアの閉まる音。わたしは不安になって顔を上げ――絶句した。


「へっ……」


ブラジャーを外しかけたナイチンゲール、完全に上半身に何も纏っていない状態なエリザベス。その他大勢の半裸状態な女子達。


隣で同じように倒れこんでいるフロイトと顔を見合わせる。――わたし達は、女子更衣室に放り込まれたのだ。


「しおん……」


「ち、違うんだよ、エリザベス……」


何してるの、と低く問いかけるエリザベスに、わたしは慌てて弁明しようとするが、彼女は耳を貸さない。


「何が違うのよ!!」


エリザベスの怒鳴り声がきっかけなのか、固まっていた女子達が次々に悲鳴を上げ始めた。手当たりしだいにわたし達へ物を投げつけ始める。


――くそう、ハメられた。きっと、ナポレオン達はこの騒ぎを耳にしてドアの外側から笑っているに違いない。


「フロイトのバカ! エッチ!」


「しおんまで信じらんない!」


この裏切り者! と怒鳴りつける。


「いくらあんたに、フロイトに見せてあげるほどの胸がないからって、私達を巻き込むなんて!」


「よ、ま、待ってよ、誤解すぎる!! あいだっ!」


む、開かないな、とドアの前で呟くフロイトの隣で、スプレー缶が頭に当たって呻くわたし。


「わたし達はただ――」


「発育不良がないか、確認しに来ただけだ」


わたしの言い訳を遮ったのは、フロイトのとんでもない言葉だった。


「はああ?!」


「ジタバタしても仕方ないだろう」


睨みつけるわたしに腕を組んでそう言い放つフロイト。


「あーら、フロイトも可哀相に……」


そんな状況下で出てきたのは、ぱっちりした瞳と厚い唇が印象的な西太后だった。


「しおんの胸があまりにも貧相だから、欲求不満になっちゃったのね。だからこんなところに来た、と」


「ひ、貧相だって!?」


「だってそうじゃない」


西太后がわたしの傍へ歩み寄ると、じーっと服の上から見つめ始めた。


「本っ当真っ平らで何の面白みもない体」


「ち、違うもん!」


わたしは羞恥で泣きそうになりながら叫んだ。


「服があるからそう見えるだけだもん! 本当はちゃんとあるんだもん!」


「へーえ、そうなの」


キラリ、と西太后の目が光った。危険を察知した時には既に時遅し。


「じゃあ確認させてくれるわね?」


わたしに後ろから抱きつくと、服の結び目を解き、


はらり。肌蹴させた。


「きゃあああ!!」


後ろから羽交い絞めされている為、うまく動けない。わたしはあまりの羞恥に叫んだ――


「――あれ」


叫んでいるのは、わたしだけだった。エリザベスもナイチンゲールもフロイトも、フロイトさえ呆然としてわたしの上半身を見ていた。


「しおん……あんた、本当――胸がないわね」


貧乳とよくからかわれるエリザベスに哀れまれ、わたしは何と言えばいいのか分からなくなってしまった。


「普通、少しは膨らんでいるもんなんじゃないの?」


「見事に真っ平ら……ね」


「僕の胸の方が厚いくらいだ。これは発育不良というよりはむしろ、退化と言っていいと思う」


皆の哀れむ視線。西太后がはあっと溜め息をついた。


「同じ女として、心底同情するわ。まあ、実はしおんが男だったとかいうオチでないならの話だけど」


「失礼な、わたしは女だよ!」


「ああ、それは間違いない」


フロイトが口を挟む。


「確かに貧しいどころか無に等しいけれど、僕がちゃんと興奮できるということは、しおんは女の子だということだ」


「こ、興奮だって!?」


もう、恥ずかしさのあまり死んでしまえそうだ。


「へえ、」


ポカンとしているエリザベスやナイチンゲールとは違って普通な態度の西太后が、ニヤリと笑う。


「それって、今しおんに欲情していてムラムラしていてもうしおんのこと襲っちゃいたいくらいだってこと?」


「ぎゃああ!」


「あながちはずれではないな」


フロイトがそう言い、わたしが更なる悲鳴を上げた時。


「貴っ様ああ!!」


「どういうつもりだ、えええ?!」


今まで開かなかったはずのドアが開き、ナポレオンと一休が登場した。


そこから先は阿鼻叫喚。わたしの上半身を見た二人は皆と同じように凍りつき、わたしはあまりの羞恥に半ば放心状態に陥り、着替え途中だった女子達は更なる男子の登場に発狂し、その声を聞きつけた警備の人達が乱入し――
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