銀魂

□アイスキャンディ
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蝉の鳴き声が、まるで遠くから響くように聞こえた。
部屋の中から窓の外の風景を見ると、まるで動く絵画のようで、今の自分とは全くの無縁だと思い知らされる。
籠もる熱に、嫌気がさした。
滲んだ汗が額に浮かび、鬱陶しくなり手の甲で拭っても、そんな事で汗は一向にひくことはない。
土方は軍服の上着だけでなく、ベストも脱ぎ、ワイシャツの第二ボタンまで外した。
「おー、おー。色っぽいですねぃ、土方このやろー。」
不意に、障子から沖田が顔を見せる。
土方がむせた。
「ごほっ!?てめー、んだよそのカッコは?!」
真っ裸でふんどしの沖田に土方は顔をひきつらせる。
沖田は何事もないかのように、暑いですねぃ、と言った。
そんな沖田の手には白いビニール袋。
「土方さんもしやすかい?」
「断る。」
土方は無視を決め込み、机に広がる書類に没頭した。
煙草を吸おうとして、胸に手を当てて煙草を探したが、あいにく煙草は軍服の上着の内ポケットの中だ。
チッと舌打ちをする。
「暑いですねぃ。」
沖田が独り言のようにささやく。
そうだな…とつい土方も独り言のように呟いた。
かき氷かアイス、食べてぇなぁ…と、土方には珍しく、そんな事を考えていた。
がさり、と土方の背の方から音がする。
「土方さん。山崎の野郎からアイスをくすね……もらってきやした。」
「今くすねたっつたろ…。」
溜め息をつく土方に、沖田は楽しそうに笑って、後ろから寄りかかるように抱き付いた。
「食べるでしょう?」
「食べる。つか離れろよな。暑い。」
「暑いですねぃ。」
沖田はそう言って、離れないまま袋からアイスキャンディを取り出す。
「ここは定番的にミルクにしやすか?」
「他のやつで。」
間髪いれずに土方が言い放つ。
舌打ちをした沖田が渋々手渡したのは、ブドウ色のアイスキャンディ。
土方はそれを手にし、袋から取り出して口に含んだ。
舌をちろりと出しながらアイスキャンディを舐める土方は、正直エロいだろう。沖田は静かに生唾を飲み下した。





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