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□a toast to dear
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しかし、だ。





我慢というなら、俺はここ数ヶ月ずっと我慢していた。1週間前の自分の姿勢を褒めてやりたい。

たった数分。

我慢ができなかった、たった数分のせいで、現在、俺はホストとして働くこととなった。






1週間前。

俺の職場はホストクラブではなく酒屋だった。

両親と死別してから、兄姉に育てられていたが、いつまでも若い家族に依存するわけにはいかないと決意した俺は家出をするように遠方の大学に進学した。

奨学金で大学に通いつつ、授業の無い日はバイトばかり。

趣味もなければ恋人もいない。必要最低限のものしかない安アパートは寝るだけの場所。

そんな単調でつまらない毎日と、つまらない人間だと自覚はしていたが、それでも、俺はその日常を『我慢』してはいなかった。

学業とバイトで時間はないが、不自由を感じたことがないから。

ただ1つだけ、俺の忍耐力が試される場所があった。








「ホストになりましょう土方くん」






酒を配達に来る度に俺に声をかけるホストがいた。

大量の酒のケースを店名のペイントがされた白いバンから下ろして台車に乗せる俺。その隣に立つ男は俺の仕事が終わるまでそばから離れない。

そして彼は最初から最後まで俺をホストにしようと勧誘を続けている。

仲間内では西口近くのスナックのママに捕まったら逃げられないという話だが、俺からすると、こちらのホストの方が問題だった。

ただの世間話なら、広がらない話題を振ってやれば話を区切るための隙ができるが、目的が明確な勧誘にはこちらの言葉が通じない。

上客なので無下にするわけにもいかず、丁重に断り続けているが、もう2ヶ月以上続いている問答では、こちらの丁重も品切れだ。

最近では。





「君ならきっとトップになれます」
「すいません、ホストにはなりません」





まるでロボットのように言い訳一つせずに拒絶していた。




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