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□『   』
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「あれ? 見ないんですか? 『クイズ・マダオネア』」

お茶を汲みながら山崎がいう。





見廻り組と悶着を起こしたのはつい先日のことだ。

悪がきの寄せ集めである真選組とエリートで構成された見廻り組。相性は最悪。

新参の攘夷浪士たちまで巻き込んだ騒動となったが、その日のうちに解決させたのは土方十四郎という真選組の頭脳に他ならない。

だが同時に、その戦いで誰よりも深手を負ったのも土方だった。

裂傷と弾痕で全身に怪我をして、出血多量により卒倒し入院していた彼だったが。

「後で見るから録画しとけ」

………わずか2日で退院した。





真選組幹部がいつまでも不在と分かれば、攘夷浪士が活動する動機になる。

なので土方は、私服の着流しの下に白い包帯を大量に巻いたまま、半ば主治医を脅して無理矢理に退院したのだった。

そんな、本来ならば、まだ布団の中で養生しなければいけない土方は毎週見ていたクイズ番組を見ずに。





出掛ける準備をしていた。





足袋を履き、帯に刀をさして、黒い上着を羽織る。

その格好に山崎は仰天した。

「ちょちょちょっとッ!!??? どこ行くんですか!!!??」
「どこって…ポストに手紙を出しに行くだけだ」
「手紙を出しにって…そんなの鉄に行かせりゃいいでしょうが。何のための小姓ですか」

重ねていうが、土方は瀕死の重体から起き上がったばかりの病み上がりなのだ。

外出など許されるはずもない。

「るせぇな。煙草すら止められてイライラしてんだ。いつまでも引きこもってられるか」
「……じ、じゃあ、せめて誰か護衛を…」

尚も食い下がる山崎の肩に、ぽんっと掌が置かれた。






「行かせな。護衛は必要ねェさ」






沖田はニヤニヤと笑う。

「……ちッ…」

そんな沖田を一瞥した土方だったが、小さく舌打ちして、そのままスタスタと出ていってしまった。

「沖田隊長…なんで…」

行かせたんですか、と山崎は沖田を睨んだ。

土方だって馬鹿ではない。今の自分の状態だって把握しているはずだ。

もしも闇討ちなどされたら1人で対処できないことくらい分かっているはずなのに。

「大丈夫でィ」

しかし、そんな視線も沖田には暖簾に腕押し。

飴色の髪の少年は、煎餅をかじりつつクイズ番組の裏でやっている人気ドラマにチャンネルを切り替えた。この時に録画ボタンを停止させることを忘れないあたりが沖田総悟という男である。






「病院や家で縮こまってるより、惚れた奴にツバつけてもらった方が傷の治りは早ぇだろうさァ」





かぶき町辺りにいる恋人に傷口舐めてもらうんだろう、と沖田が言えば。

「……ッ?!! …っあちぃッッッ!!!!!」

山崎は真っ赤な顔で、お茶の入った茶碗をひっくり返して太ももを熱湯で濡らした。




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