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□trick or treat(2)
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がたごとと荷馬車は揺れる。

いくつもの山道を越え、すり減った車輪が砂利を踏む度に、荷台は大袈裟なくらいに跳ねる。

快適なものといったら、かこかことリズミカルに響く老いた馬の蹄の音くらいだった。








だが。

その少年は不快な振動などものともせず、荷台の隅で眠っていた。







べったりとした黒い神父服を着ているが、とても聖職者には見えない。

仰向けに寝転がって腕を枕にして眠っている。ツバの短い中折れ帽子を日除け代わりに顔に被せ、その顔は分からないが、帽子の下から薄茶の髪が伸びていた。

そして一番、聖職者らしくないのは腰に挿している得物。







銀の十字架のチャームを付けた長剣の鞘が鈍く光っていた。







「……んー…」

帽子の中からくぐもった声が聞こえる。そして青年は歌うように寝言をつぶやいていた。

それは寝言とは思えないほど明瞭な活舌だった。

まるで、それをそう主張することが天から与えられた彼の使命。存在意義そのものであるかのような声だった。







「お願いでさァヒジカタさん。死んでくだせェ。いやマジで」



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