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□dress up in love(9)
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いったいどれほどの時間、抱き合っていただろうか。

お互いの頬に伝っていた涙は渇き、緊張で汗をかき、熱くなっていた手のひらもいつもの温さに戻っている。

ただ耳元で聴こえる相手の息遣いや密かな揺れに、相変わらず心臓がうるさい。

カチンと分針が揺れる。






「……銀時……」






動いたのは土方だった。

もぞもぞと体を動かして銀時との体にわずかに隙間をつくる。少しだけ浮かせた手のひらで銀時の背中を優しく撫でたのは『そろそろ離せ』というサインだろう。

だが対する銀時は。

「嫌だ」

子供のように駄々をこねて、土方を抱き締める腕に力を込める。

確かにずっとこの体勢というわけにもいかないが、銀時は土方を離したくなかった。

もしこれが夢で、土方を離した瞬間に目が覚めたら、自宅のベッドで仰向けになって寝てたりしたら。






嫌過ぎる。







「………銀時。ちゃんと目ェ見て話しがしてぇんだ………こ、これからのこと、とか……」

しっかりと銀時に告げた土方だったが、その声は微かに震えていた。

土方だった恐いのだ。

もう抱き合う前の2人には戻れない。

2人で新しい関係を作らなければいけないし、新しい関係を壊さないようにする環境で生きたい。

男女の関係でも難しいことだ。同性ならば尚更だろう。

しかし向き合わなければならないのだ。

2人で。

「…………」

土方の意図が分かった銀時も、覚悟を決める。





「……手…繋いで…」





銀時は土方の背中から右手を離した。

頷く土方も同じように左手を離して、抱き合った格好のまま手探りで相手の手のひらを握る。

そして、ゆっくりと体を離した。

体と体の隙間が寒い。






だが、お互いに近距離で見つめ合った瞬間に、そんな寂しさは忘れてしまう。






お互いの頬に涙のあとは、この数ヶ月、相手のために苦しんだ証拠。

潤んだ瞳が揺れているのは、相手を想う、胸の奥の熱さがしっかりと相手に伝わったという証拠。




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