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□dress up in love(7)
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土方の過去は『Truth』の歴史と近藤の履歴に付随している。

近藤は高校を卒業してすぐに地元にある布の染色工房に就職したのだが、入社してすぐに会社の限界を感じた。

高齢の従業員、骨董品のような機材、年々減る依頼。

このままではいけないと思った近藤は自分が会社を立て直そうと決意し、不器用ながらも独学で経営学を学習していた。

そんな彼の人柄の成せる業か、近藤が20歳になった時に社長が近藤に経営権を譲渡し、現在の『Truth』が誕生した。

近藤が会社を設立した当時、土方は高校生。普通ならば進路に悩むところだが土方は即決だった。






近藤たちと一緒に『Truth』を支える。






それが不良だった土方を更生させてくれた近藤へ報えることだと思えた。

土方は都心の大学の経済学部に入学した。

立ち上げたばかりである『Truth』の経理事務を一手に担いながら経営するために必要な資格を取り、その合間に当時まだ中学生であった沖田と一緒に『Truth』の服を着てモデルの仕事をしていた。

昼夜を問わずに働き、勉学に励む。

忙しさに息切れし、苦しくて、しかし一緒に働く仲間たちには愚痴一つ言えなかった日々。





土方が『坂田銀時』というデザイナーを知ったのは、そんな時だった。






大学を卒業して、すぐ『Truth』に就職した土方は空席だった副社長の椅子に付いた。

しかし土方が副社長になったのは、ちょうど会社が株式会社として軌道に乗り始めた時期で、土方は相変わらず忙殺されていた。

今まで近藤がしていたお得意先への挨拶回りの仕事もするようになって、さらに仕事が増えた。

高校の後輩にして『Truth』の同僚である山崎に、休養をとってくれ、病院に行ってくれと再三言われながら連日残業し会社に尽くした。






土方には『Truth』しかなかったから。







そして、そこに訪れたのも、ただの仕事の一環だった。




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