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□粒と塵と
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どうか皆様。目に見えぬものに怯えぬように。






気が付いてはいけません。

世界には、目に見えぬものが充ちていることに。






私たちが吸い、吐き出す何かは目に見えぬ小さな粒の集まりで。

私たちが踏み締める大地も小さな砂利の塊で。

私たちは体の中にも外にも目に見えぬ小さな生き物を飼っていて。

私たちは小さな生き物を土台にした全ての生き物を食べていて。

私たちが弄る機械は0と1の信号で。

私たちの体すら小さな細胞の塊で。







世界は粒で、宇宙は塵で。

私たちの心は、まだ在処すら見つかっていないのだから。






だから目に見えぬものに怯えぬように。





空気を疑わないで。

大地はしっかり踏みしめて。

共存することを否定しないで。

食べ物に感謝して。

情報の真偽を見定めて。

自分たちの体を大切にして。






見えない心を育んで。






世界は粒で、宇宙は塵で。

私たちは小さな何かだけれど。





ここに居るから。

間違いなく、形があるから。







もしも。

もしも目に見えぬ何かが毒ならば、きっと恐ろしいでしょう。

ゆるゆると人知れず体に入るそれを絶望の友のように思うでしょう。






けれど怯えないで。

そんな目に見えぬ毒も、粒の世界と塵の宇宙を作るための、何かでしかないのだから。






私たちには形があるから。

漂うだけの粒ではない。

舞い散るだけの塵ではない。







何も怯えることはない。







きっと。

きっと生きているだけで。

可能性は無限なのだから。






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