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□優しい白は夢で笑う
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朝だ。
ベランダの鉄格子の上で雀がたむろしているようで、チッチッという鳴き声がやけに大きく聴こえる。
「……………」
銀時はぼんやりと天井を見つめていた。
朝だ。
(………夢……だよなァ?……)
死んだ魚のようと揶揄される目は寝起きのせいか、いつもよりも覇気がない。
ただぼんやりと天井を見上げているだけだった。
(………夢…だろ?)
心でそっと呟いて銀時は双眸の上に腕を置いて両目を塞ぐ。
完全な闇の中。
(……夢だ……)
強く強く、胸中で呪文のように繰り返すのは、それが夢であってほしいから。
目を塞げば、耳の奥に甦る。
《坂田氏》
彼の容姿、彼の声。
しかし彼とは明らかに違う。
態度、口調、存在感、人格。
妖刀が生んだ、もう1人の土方十四郎。
《寄り道したんだ。ちょっとだけお話しようよ……坂田氏》
夢を見た。
白い白い、儚くて優しい夢を。
◇