たからもの

□Crash02
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 たしかにオレは普段から「神なんかいねえ」って言ってるよ?でもさ、最近たまには神様の存在を認めたくなるときもあるんだよ。趣旨替えってやつ?オレも大人になったなーとか思ってるよ、うん。ガキの時は、ちょっと突っ張ったことも言っちゃってたりするじゃん?思い出すと赤面するような。まあ、そんな感じでオレもいろいろ考え方が変わってきたんだと思う。じゃあ、いつどんな時に神様信じたくなるかって。
 そう、たとえば……
 今みたいなとき――


 瓦礫の下からやっとの思いで救出されたエドワードは、ズキズキと自己主張している頭に舌打ちした。
「エルリック先生!大丈夫ですか!?」
「すぐ、救急車へ!」
「いや…まだ大丈夫だから…ああ、こいつは救急車に乗せて」
 大丈夫なわけないだろ、もーもー!と内心イライラしているが、頑張ってる軍人たちには微塵にもそんな内心は見せずに、額から流れる血を手の甲で拭う。
「しかしっ!」
「しかしとか言ってる前に!ほら、次のヤツどこだよ!?」
 怒りに任せて立ち上がると、一瞬頭がグラッとした。本当に、なんて日だ。ったく、もー!もー!お願い神様助けてーと、些か棒読みで思ってみたりする。
 とりあえず安全な場所って思われてる、さっき跳弾で瓦礫やらガラスごと窓枠やら落ちてきてオレを傷だらけにしたこの救護所へ、足を被弾したヤツが運びこまれた。
「ほら、しっかりしろ!エルリック先生が診てくれるから!もう大丈夫だぞ!」
 大丈夫じゃないですよー。さっき窓枠落ちてきて、壁崩れましたー。あ、崩れたからもうこれ以上崩れることはないってか?
「おい!しっかりしろ!今、診るから!」
 傷の周りの布地を切り裂き、具合を診る。あーあ、ガッチリ弾入っちゃってるし。でも血管とかは大丈夫か…ん?
「弾の尻が見えてるな…よし、取っちゃおうぜ」
「「え…」」
 なんかワケわかりませんって顔してるケガ人と付き添い軍人を放っておいて、まずは止血してから麻酔薬を打つ。局所麻酔で量も少しだから、後で病院行った時には醒めてるだろう。
「せ、先生…先生もなんか傷だらけなんですが…」
「あー?んなことはいいから、ちょっと体抑えてて」
「だって、そんな…栗やニンジンみたいに…」
「栗拾いやニンジン抜くときは、麻酔なんかしねーよ!ほら、口を閉じてろ!舌噛むぞ!」
「うっ!……っ!!!!」
 抜けた弾を、ケガ人に渡してやる。
「なんか、そういうのって弾除けの御守りになるらしいぞ」
「ほ…ホント、ですか…?」
「ああ…よし、終わりっと」
 ちょうど来たらしい救急車へ、タンカに乗せて連れていかせた。
 ああ、もー。血が止まんないなあ。もー、目に入りそうだよ、鬱陶しい。泥とか血とかで、もうアウトだし、この白衣。
 もー、もー!

 もー!もー!!

 
 
 
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