過去拍手
□雨もいいもんだ
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執務室の窓に当たる雨音。さっきからカリカリ聞こえてくるイヤミなくらいのペンの音。
「あーっ、うざい!」
こっちだって一生懸命やっているんだ!ただ、仕上がる以上のスピードでありとあらゆるところから処理しなきゃいけない書類やら雑務が降ってくるのだから、仕方がない。
「そんなに急かすなーっ!」
「…別に急かしてませんけど…」
「さっきからカリカリカリカリと、お前は嫁イビリする姑かぁ?」
どういう例えだよ…と、呆れかえったアルフォンスは、長年一緒にいるだけあって対処方法も心得ている。
「雨ならもうすぐ上がりますよ。ほら、肩も脚も、痛くないでしょう?」
あ、そう言われてみれば、とエドワードは思った。自分のことは全て見透かされているようで、恥ずかしいやらちょっぴり嬉しいやら。
そんな時に急に声色が変わった、副官のそれから、弟の、いや恋人のそれへ。
「兄さんのことで解らないことなんてないよ」
「////…恥ずかしいやつ…」
臆面もなくそう言い切った弟に、毒づきながら、それでもさっきまでのイライラは消え去ってしまった。
まるで魔法のように。