過去拍手
□白コート
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今日は特別寒い。それもそのはず、外を見れば雪まで降ってきている。
それでも仕事には行かなくてはいけないわけで、しょうがなく幸せなベッドの中から這い出した。
ダイニングに入るとすでに温められていて、テーブルには美味しそうな朝食がならべられている。しかしそこにはお膳立てしたハズの弟の姿は無く、一枚のメッセージカードが置かれていた。
『今日は会議の資料づくりがあるので先に行くよ。特別寒いから、このコートを着るといいよ』
見ると、そこには軍支給の黒いコートではなく、裏にフリースのライナーがついた、暖かそうな白いコートが置かれてあった。
エドワードが袖を通すと測ったようにぴったりでとても着心地がよく暖かい。さすがアルと感心しながら、姿見で確認をすると、ふと何を思ったか自分の部屋へ飛び込んだ。
手にしていたのはクリスマスにアルフォンスからもらったマフラーだった。軍支給の無粋なコートの黒には似合わないからと、大切にしまい込んでいた真っ赤なマフラーだったが、このコートになら、似合いそうだ。
息も白くなる寒い朝だったけれど、エドワードはこの世界の誰よりも暖かい気がした。
そして黒ばかりの司令部の中でひときわ白く光り輝く天使のようなその姿は、この先、『軍支給のコート着用』という、軍規さえも改定させる力があったという。
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そんなオチですわ(笑)